2005年10月01日

国の財政を調べるときは「国力」を資産換算しないと正しい理解ができません

 前々回のエントリで,日本の財政に関するニューズの破綻論者と反対論者の解釈の仕方が違うという話をしました。そしてどちらの捉え方も不十分だという考察を試みました。たとえ話をもう一度再掲しておきましょう。

「国の借金は700兆円だ」というニューズを見たときに,破綻論者と反対論者ではどのように解釈するのでしょうか。
 破綻論者なら,これは国民一人当たり580万円超の借金を背負っていることになる!赤ん坊もお年よりも580万円だ!えらいこっちゃ!返せるわけない!という解釈をして,一気に「もう日本はダメだ!」にたどり着きます。
 一方で反対論者なら,待て待て!国民は1,400兆円も金融資産を持ってるんだぞ。借金だとしてもたかだか半分じゃないか。他にも海外債権いっぱい持ってるんだぞ。いざとなったらそれを回収して借金返せばいいじゃないか!脅かすなよバカヤロー!ってところでしょう。

 まず破綻論者の主張について見ましょう。
 国民一人当たりという換算をするのは面白い。でも実際は赤ん坊もお年寄りもお金を稼ぎませんから,就労者一人当たりの金額で見ればなお恐ろしい金額が出てきます。ただでさえ住宅ローンと教育ローンという双子の赤字を抱えている一般家庭に,さらに国の借金の支払予約権(こんな単語はないですが雰囲気で理解してください)がついて回っている状況です。さらにこれから現実的にサラリーマン増税が追い討ちをかけてきます。・・・こんなことまで書けば破綻論者ならずとも不安でいっぱいになってくるでしょう。
 ここまでは現状の日本が抱えているリスクを冷静に分析した結果ですから何もおかしなところはありません。しかし破綻論者はここから,ネガティブな情報解釈が原因でおかしな論理に陥りがちです。反対論者が指摘する,国が持っている資産について触れずに負債の絶対金額ばっかり見ると必ず陥穽にハマります。そう。資産に注目すべきなのです。
 ただし,ここでいう資産というのは会計上の,つまり帳簿上の資産ではなくて,「政治力」「民力」などの値段の付けがたいパワーのことです。帳簿の資産を見ても債務超過を免れるようなステキな含み資産があるわけないのだけれど,それでも実際に破綻せずに国債が高値で推移している(最近は株が好調なので債券が売られている)のは,帳簿に表れない資産を日本は持っているからだと考えないといけない。それを意図してか知らずしてかオミットしてしまうのが破綻論者の論理です。

 国の財政バランスシートを読むときに「国力」という観点を見落とすわけにはいかないのです。あくまでも会計的に捉えるというのであれば,「国力」に資産価値を持たせるのだと考えればいい。一般の会社で考えれば「のれん代」のようなものですかね,雰囲気的に。
 このパワーを如実に体験できるのが世界帝国アメリカです。アメリカは日本を上回る金額の財政赤字と経常赤字をいつ果てることなく継続中なのですが,政治力・軍事力という目に見えて強力かつ帳簿に表れない「資産」をもっています。だから属国日本に米国債をグダグダ買わせて売れないようにしたり,自国保護政策と他国干渉政策を並走させたりという無茶苦茶なこともできます。逆に言えば,これができなくなったときがアメリカの没落,つまりアメリカが正真正銘の双子の赤字でどうにもならなくなる(=破綻する)一歩手前のサインになります。

 おいおい。日本にそんな国力どこにあるんだよ!っていう突っ込み入りましたか?もちろんあるからこそ現実に日本は破綻していないのです。次回はこれを考えていきます。  

Posted by p-5796189 at 00:14Comments(0)TrackBack(1)

2005年09月27日

国家破綻論,賛成か反対か?どちらの言い分ももっともなようでそうでもないような

 昨日は日本の財政状態について,一般会計のみならず特別会計なども含めた全体像で議論をすべきであると書きました。特別会計について付け加えると,これは非常にやっかいでありまして,昨日紹介した参考書(→松浦武志『特別会計への道案内 〜387兆円のカラクリ〜』創芸出版)をパラパラっと眺めても,よほど内部事情に詳しい人でもない限り財務諸表の数字からはどの部分が不良化しているかなどはわかりません。また,赤字だからといっても,間抜けな経営が原因なのか,そもそも民間で出来ないようなリスクの大きい案件(宇宙開発事業など。農林水産業なども含まれるでしょう)を扱っている構造自体に原因があるのかについても数字だけではわかりえません。現在の国のディスクローズ水準ではわからないことだらけなのです。ま,そんなことは時間が経てば解決されるだろうし,特別会計の財源の大部分を占める財投債なども今後議論されるでしょうから改善の方向へ向いていくとは思いますが・・・。

 今日もこの特別会計についての話はここらで置いて,昨日の破綻論者の主張についての考察を進めます。
 日本財政破綻論は,とにかく情報をネガティブにとらえるところから始まります。そのネガティブな考察を進めていけば必然的に日本の財政は破綻するだろうという結論に行き着くわけです。それが正しいかどうかは数年後にならないとわからないのですが,破綻論が間違っているとしたら,はじめの「ネガティブに情報を解釈する」というスタンスが間違っているということになります。ではどのようにすれば,そのネガティブな解釈が間違っていると決めることができるのでしょうか。
※あくまで,仮定から結論へ至るまでの論理に狂いがない場合の話です。この論理展開の部分さえネガティブなバイアスがかかっている主張も散見されますが,それはただの二流の破綻論者によるものです。

 実はここが永遠のテーマであり,財政破綻賛同者と反対者が決して折り合えない「情報解釈」の葛藤なのです。冷静に公表あるいは非公式データを集めて分析した結果,ネガティブな結論が出たのだとしても,ハナっから破綻論者=うさんくさいという目でしか見れない人には伝わりません。また,これまで日本は破綻する!と言い続けてきた側にとってみてポジティブな結論が出てきた場合は,それを認めたくなくなって無理やりネガティブな解釈に換えてしまうこともよくあります。このようなポジション・トークは第三者として鳥瞰していれば,そのバカバカしさに気付くものですが,論争の当事者になってしまうとそういう余裕は持てなくなります。ネガティブな解釈が正しいのか正しくないのか,誰もわからなくなってしまうのです(実際は起こってみないとわからないもんですが)。

 ちょっと抽象的な話ばっかりで眠たいですね。具体的な事例を出しましょう。
 例えば「国の借金は700兆円だ」というニューズを見たときに,破綻論者と反対論者ではどのように解釈するのでしょうか。
 破綻論者なら,これは国民一人当たり580万円超の借金を背負っていることになる!赤ん坊もお年よりも580万円だ!えらいこっちゃ!返せるわけない!という解釈をして,一気に「もう日本はダメだ!」にたどり着きます。
 一方で反対論者なら,待て待て!国民は1,400兆円も金融資産を持ってるんだぞ。借金だとしてもたかだか半分じゃないか。他にも海外債権いっぱい持ってるんだぞ。いざとなったらそれを回収して借金返せばいいじゃないか!脅かすなよバカヤロー!ってところでしょう。

 どちらの意見も正しいようで実は正しくない。どうしてだかわかりますか?(ま,僕の解釈では・・・という注釈つきですが)
 気になるところですがこの続きは明日にしよう。  
Posted by p-5796189 at 22:26Comments(0)TrackBack(0)

2005年09月26日

毎年恒例!日本の財政赤字と債務超過を巡る報道が出そろいました。どうなるニッポン?

 日本の財政赤字に関するニューズが相次いでいるので(毎年恒例なのですが)僕の考え方,というか今後の見通しについて簡単に記しておこう。あんまりエントリが長いと読むほうも書くほうも疲れるので何度かに分けます。とりあえずは国の借金のニューズからご紹介。

(Sep/22/05 Sankei Webより引用開始)
【国の借金795兆円 6月末、過去最大を更新】
 財務省は21日、国債や借入金など国の債務(借金)残高が今年6月末時点で795兆8338億円に上り、過去最大を更新したと発表した。
 歳入不足を補う国債の大量発行が続いたことが響き、今年3月末より約14兆円増えた。国の借金は2005年度の税収見込み額(約44兆円)の約18倍の規模。国民1人当たり約631万円の借金を抱えている計算になり、危機的な財政状況をあらためて裏付けた。
 今年3月末の地方の債務残高は204兆円程度と推計され、国と地方を合わせると借金残高は1000兆円規模に膨らむ。
 国の債務残高は国債と政府の借入金のほか、短期的な資金繰りに使う政府短期証券(FB)の残高を合計する。
 内訳は、国債残高が640兆4002億円と、3月末より14兆369億円増加。国債の中心になる普通国債のうち、10年以上の長期国債は324兆1447億円、2―6年の中期国債は138兆5291億円、1年以下の短期国債は47兆6512億円だった。
 一方、借入金は8480億円減って、58兆2642億円だった。
(引用終了)

 本家本元のここから詳細データがとれます。時系列データもとれるのでヒマな人はExcelなどで分析してみてもいい勉強になるでしょう。続いて,これも毎年この時期に行われる報道ですが,国が債務超過だというもの。

(Sep/26/05 時事通信より引用開始)
【国の債務超過288.7兆円=財務省】
 財務省は26日、国の決算に民間企業の財務諸表の考え方を取り入れまとめ直した「国の財務書類(2003年度版)」を公表した。それによると、03年度は一般会計ベースで288兆7640億円の債務超過となった。税収減などにより前年度より約25兆円悪化した。
(引用終了)

 どうして2003年度が今ごろにならないとまとまらないの?という素朴な疑問が湧いてきましたが,悪いニューズほど後出しになるのが官僚思想ですから気には留めないでおこう。ま,特別会計やその他の国の出先機関などでは複式簿記を導入しているところが少ないので集計が遅れるのではないかという話を聞いたことがありますがね。
 このニューズで気になる点は,「一般会計ベースで」というタームと,「前年度より約25兆円悪化した」というターム。国家経済がいつまでたってもデフレから抜け出せないのだから債務超過が解消されないのは仕方がないにしても,このニューズを流す意図はどこにあるのだろうか,というのが今回から始まるエントリの本題。

 結論から言うと,特別会計を精査しないとどの程度日本の財政がむしばまれているのかという判断のつけようがないんじゃないか。15/3末の数字になりますが,特別会計は合計387兆円(一般会計の約4.7倍!)にも上ります(※)。これを議論の中心に据えずして一般会計のみを侃々諤々と議論するのはナンセンスではないか。それともわざとそのような議論に持っていこうとしているのだろうか?そうだとしたら国の債務超過が288.7兆円という数字が決して大きい数字だとは思えないのです。特別会計の債務超過も合算したらもっとすごい数字が出てくるんじゃないの?
※→松浦武志『特別会計への道案内 〜387兆円のカラクリ〜』創芸出版

 いわゆる財政投融資なんかも特別会計です。先月でしたか山拓も100兆円ぐらいは焦げ付いているはずだというコメントを出していましたし(※),ぴっかぴかの財務状態で一般会計の赤字分をカバーしているなんて言えないだろうことは容易に想像できます。なんせ首相補佐官(当時)のコメントですからねえ。無視できるはずがないでしょう。
※→山崎拓・首相補佐官が「財投不良債権100兆円」と言明
(Aug/26/05 東京アウトローズ WEB速報版)


 で,今更債務超過だからイケナイとか,初学生のママゴトみたいなことを言うつもりはなくって,現実的に,じゃあどうなるの?どうするべきなの?っていう話をしないといけない。そこで採られるアプローチはいくつかあるのですが,今日は僕も学生時代によく読んだ,破綻本の類いが導き出す結論を紹介しよう。

 破綻論者として有名なのは浅井隆,太田晴雄などです。それから最近の言論を見ている限り,副島隆彦も入ってくるでしょう。彼らの主張は「日本国の財政破綻は不可避なので国民はしっかり財産を守ろうね」に尽きます。官僚悪者論,アメリカ陰謀論などなど論者によって思考プロセスは様々ですが結論は同じです。はなっから日本の財政赤字がなんとかなると考えないのが彼らの特徴。個人的には上の記事などを読む限りでは,これはこれで考え方としては間違ってはいないと思うのですが,一般社会人から見ると異端児の扱いを受けているという印象は否めません(本自体は結構売れているらしいが)。人間誰しも悪いほうへ悪いほうへと考える人の話は聞きたくないものですし,内容がデタラメの嘘っぱちでも,小泉首相のように薔薇色の未来を語る方の話を聞きたがるものですから。しかしここでは破綻論が正しいかどうかについては述べません。誰にもわかりませんから,実際になってみない限り。

 赤字の額自体はアメリカの方が大きいですから,単純に数字だけ見れば日本より先にアメリカが逝ってしまうでしょう。しかし,アメリカ国民は借金してでも欲しいものを手に入れる民族性を持っていますから,デフレにはなっておらずフローは元気です。世界最強の軍隊をもっていて893な商売だってできますし(前日のエントリなど参照)カトリーナ被害だって商売に代えてしまうぐらいのしたたかさと強欲さを持つ国です。軍隊をもたず,中国や韓国,北朝鮮からカツアゲくらってばっかりの国とは比べようもないパワーをもっているので,実際は日本の方が破綻する可能性は高いのではないかと,僕も思っています。ま,実際に起こってみないとわからないけど。

 おっと。長くなりそうだ。続きは明日にしよう。明日はこの破綻論のどこに問題点があるのかについて見ていきたいと思います。  
Posted by p-5796189 at 21:42Comments(0)TrackBack(0)