2005年11月25日

銀行が利益をいっぱい出したのは良いとしても,本質を見誤っていないか?

 今日はみなさん新聞を読まれたら,銀行が儲けまくっているという記事に遭遇したことでしょう。これについての雑感を少々。

 主要6紙の社説を読み比べましたが(書いていないところもありました),読売新聞の社説は面白みのないものでした。今度は顧客の方を向けという主張でしたが,そんなことは皆が感じていること。オピニオンリーダー(なのか?)らしい社説を展開してもらわないと困ります。
 そこで,まずツッコミどころありという意味で,産経新聞の社説から引用しよう。

(Nov/25/05 産経新聞新聞社説より引用者による要点箇条書きにて引用開始)
【企業収益 始まった優勝劣敗の時代】
  • 東証一部上場企業の九月中間決算は過去最高の経常利益を更新。
  • 好決算は増復配だけでなく,株価上昇,従業員の収入アップといったかたちで家計を潤す。これが消費拡大,設備投資増に結びつき,再び企業業績に跳ね返る。景気の好循環のかたちがくっきりと見えてきたのは心強い。
  • 長期不況に苦しんだ企業は,不採算部門の整理,人員削減などを断行し,投資も厳しく精査した。こうした努力が企業の財務体質を強化し,好決算を生んだのは間違いない。
  • 追い風に乗れなかった企業は,戦略構築の失敗や,リストラの不徹底を指摘されてもやむを得まい。
  • こうした企業改革の背景に,日銀の超低金利政策があった点も忘れてはならない。企業の利子負担を軽減し,リストラや設備投資を促したのは確かだ。
  • 超低金利政策は当分維持されるだろうが,量的緩和は解除に向けた議論が行われている。解除された場合の市場金利の動きは予測できない。企業の備えは万全なのか。
(引用終了)

 あいかわらずの”上から目線”の主張は気分を害しますが,いつものことだから許してやろう。
 まず,根本的な内容の矛盾を指摘しよう。
 本当に「景気の好循環のかたちがくっきり」見えて来たのなら金利が上がらないとおかしい。実際は長期金利が徐々に上がってきているのですが,なぜ最後に「超低金利政策は当分維持されるだろう」などという予想がたつのでしょうか。長期金利が上がって短期金利が上がらないという現象はもちろん一時的には起こりうることですが,よく考えてみてください。国債売買市場で決まる長期金利(指標としては10年利付債の利回りがよく使われる)が上がるということは,それだけ国債の売り圧力が大きくなるわけです。なぜそうなっているかというと,「くっきり見えた」景気回復のおかげで,銀行は儲からない国債になんて投資する理由がなくなるからです。当たり前でしょう。銀行は株式会社ですよ。儲かる事業が目の前にあるのに放ったらかしにして儲からない事業にばっかりカネ注いでたら,経営者はすぐにクビになりますよ。
 郵政民営化にだって産経新聞は大賛成だったはず。民営化して官から民へ資金が流れるというアナウンスに何の疑いも持っていなかったはずで,郵貯が低利回りの国債を売って高利回りの企業向け貸出とか外債を買うとかすれば,官から民に流れるし円安になるし金利は上がるってことぐらいはわかってたはず(実際,郵政民営化法案が通ったあとの円売りはものすごいですよ。おかげで僕のFXは空前の利益をあげていますがね)。
 次に起こるのは長期金利の上昇に伴って起こる,長期貸付の金利上昇です。これは,設備投資しようという需要が大きくなったら少々金利が高くても借りたいと思いますから金利は上がるのだと考えてもいいでしょう。長期金利が指標になってさまざまな金利体系が決められていますから,例えば住宅ローンの金利も上がっていくことにもなります。借りる側にとっては金利負担の増加になりますね。
 一方で低金利政策が維持されたらどうなるか。無担保コール金利がゼロ金利(かそれに近い)ということは,銀行は別に預金者から集める預金金利を上げなくても銀行間で超低金利で借りられるということです。わかりますか?銀行が稼ぐであろう利ざやの額がかなり大きなものになるということです。預金者の金利はゼロに近いままローン金利だけが上がって,銀行は調達金利を低く保ちながら高金利運用ができるのでさらに利益を伸ばし続けることでしょう。
 ・・・銀行至上主義論者ばかりじゃあるまいし,こんな状態が続くでしょうか?

 この状態が続いたら困る機関で放っておけない存在なのが日銀です。日銀だって本当は日銀法で禁止されている国債の引受をさせられていて(注:もろに禁止されているプライマリーな引受ではなくて,セカンダリーでの買切りという実質的な引受という意味です)損切りもさせてもらえない国債をたんまり持っているので,長期金利が上昇し続けたら含み損で債務超過になってしまう可能性だってあります。ま,これを見越してか,日銀は保有国債の会計上の評価法を,決算時に国債相場下落による評価損を計上しなくてよいというような変更を施しているわけですが(これって本当は許されないことなんですけどね)。とにかく実質的な債務超過ってことはありうるわけで,もちろんそういう事態は避けたいから日銀だってゼロ金利を解除しないとやっていけなくなるのです。彼ら自身がわかっているから早いこと量的緩和をやめてゼロ金利もやめたがっているわけでしょう?銀行から買い取った株の含み益があるうちに処分して少しでも財務体質を強化しておかないと,保有国債の暴落は円そのものの信頼をも失墜させることになるからね。

 そんなわけで,産経新聞は「経」の字が入っている割には金融経済のことが全くわかっていないことが判明しました。
「企業の備えは万全なのか」には笑いました。ホリエモンに買収されかかった当事者がえらそうなこと言うな。

 続いて毎日新聞のコラムを引用しよう。

(Nov/24/05 MSN-Mainichi INTERACTIVEより引用者による要点箇条書きにて引用開始 ※原文はリンクへ)
【大手銀行:「もうけ過ぎ批判」が再燃か】
  • 大手銀行が05年9月中間決算で空前の利益を上げたことで,不良債権問題の深刻化以降,目立たなくなっていた「もうけ過ぎ批判」が再燃する可能性がある。
  • 日銀が量的緩和政策を続ける中,預金者へ支払う利息は事実上,ゼロに張り付いている。100万円預けた場合,利子はスーパー定期でさえ年間1500円。「これだけもうかっているのに,なぜ,預金者に還元されないの?」との疑問が出ても不思議ではない。
  • みずほフィナンシャルグループの前田晃伸社長は「非常に大きな額の不良債権の処理をして,過去の資本の蓄積をほぼ全部使い切った。今は資本を少し戻している最中」と,衰弱した体力の回復過程にあると説明。
  • さらに「(小口顧客の)預金対応収益はマイナス。デフレが解消してから預金金利をお返しすることしかできない。」とも述べ,預金金利の引き上げは,日銀の金融政策が変更され,短期金利がつくようになった後との考えを強調した。
  • 株主への利益還元は早めに行われるが,超低金利の解消には当分,時間がかかるとみられることから,預金者への還元は株主より遅くなりそうだ。
(引用終了)

 景気回復なのに超低金利継続というような産経新聞のような矛盾した論理展開ではないのですが,いまいち弱い。国民を動かすにはアピールが足りない。僕なら次のように書くね。
 
「何十兆円もの国民のカネを公的資金などという誤魔化し用語で投入されておいて(もとは郵貯簡保などの資金を大蔵省(当時)が財政投融資で支出),責任者の追求もなあなあで退職金もたっぷり支払って,デフレが進んでいるのに手数料だけは値上げして,国民には十分な金利も払わずに中小企業の虎の子資金を貸し剥がして,外貨預金みたいなうさん臭いバッタ商品を甘い言葉で売りつけたらアホでも儲かるはずだが,実際は貸倒引当金の戻り益で利益を底上げしないと最高益を達成できない本当の理由を彼らはわかっているのか?国民の税金をバカスカ使ってるのに自らの高給を下げることに目一杯抵抗して,自らを「勝ち組」と呼んではばからない。このたわけが。いろんな犠牲のうえに自分たちの虚業が成り立っていたんだという自覚と反省がないのなら,邦銀が欧米銀行に肩を並べることなんて永遠にできないだろう。」

 ああ,ちょっと書きすぎたな。話の続きはまた明日。  

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2005年11月16日

景気が回復してるんならゼロ金利やめろよ じゃなかったらウソつくなよ

 経済関連ニューズを追っかけるのは面白いです。やっぱり元銀行員の血が騒ぐのでしょうか。まずはこのニューズをご覧いただきましょう。

(Nov/11/05 MSN-Mainichi INTERACTIVEより引用開始)
【実質GDP:景気は回復基調 内閣府が強調】
 内閣府が11日発表した05年7〜9月期の国内総生産(GDP)速報は,実質で前期比0.4%増,年率換算1.7%増と,数字の上で年前半でみられた回復の勢いは鈍ったが,内閣府は景気の回復基調に変化はないと強調した。民間調査機関も「成長減速を過度に悲観的に見る必要は全くない」(第一生命経済研究所)と,景気が底堅さを維持しているとの見方は一致している。
(略)
 一方で,原油価格高騰は依然として不安要素で,中国や米国経済の減速による輸出への悪影響や,国内の個人消費を冷え込ませる懸念もある。増税や医療費の自己負担分増加などが政府・与党で議論され始め,消費者心理にどう影響を与えるのかは不透明で,内閣府幹部も「消費の動きを慎重に見極める必要がある」と話している。
(引用終了)

 景気が回復してるんだったらゼロ金利・量的緩和政策なんて早くやめないといけません。これだけプラスの情報が出そろってきているのだから,日銀が早く解除したがっている方が正論です。景気が回復しているって政府は宣伝したくていろんな数字を大げさに出しているんだろうけど,一番大事な部分でしり込みするんですね。ま,数年前に一度ゼロ金利を解除した後に不況に戻ったもんだから慎重になるのはわかるけど,あの時の不況はいわゆるITバブル崩壊が波及したものだからね。今とは状況が違う。今もいろんなリスクを抱えているじゃないかという反論はあるでしょうけど,問題のない時期なんてないんだから,もっと柔軟になるべきなんです。

 ここまでは僕の正論。というのは,この政府が発表している経済指標が本当にこんなに景気回復を告げているものであればという仮定での話ということ。実際はそんなわけがないでしょう。大企業だけの指標を見たって,膨大な数の一般消費者の消費が戻っていないと判断を誤ります。

(Nov/15/05 MSN-Mainichi INTERACTIVEより引用開始)
【生活保護:04年度100万世帯に迫る 厚労省公表】
 厚生労働省は14日,04年度1カ月平均の生活保護を受けている世帯が前年度比5万7617件増の99万8887世帯に達したと公表した。保護世帯のうち高齢者世帯が46万5680世帯と最も多い。生活保護を受けている人数(1カ月平均)も7万9061人増の142万3388人。一方,04年9月の保護開始世帯1万7050世帯のうち,最も多い理由は「傷病」で,6833世帯(40.1%)を占めた。
(引用終了)

 これが実態でしょう。これからサラリーマン増税とか社会保険料負担増とか相続税強化とか退職金課税強化とか,一般サラリーマンや年寄りをいじめる政策が目白押しなんですから,早いうちに生活保護を受けたほうが生きるためには効率がいいんです。生活保護のお金は非課税ですからね。働いても働いてもいっぱい収奪される羊達が苦悩のうちに人生を終えるのを見たら,働かずに生活保護を受けるほうを選ぶ人が増えてもおかしくないでしょう。

 実態はこうだというのを見た後で,さらに政府の発表した数字が実は???だったという記事も紹介しておきましょう。

(Nov/16/05 Nevada経済速報より引用開始)
【景気指数の悪化】
日経新聞に極めて小さな扱いでこのような見出しがありました。
【景気一致・先行指数 ともに50%以下】
これは本来なら一面トップで報じる事態なのです。
何せ,政府マスコミあげて景気は回復した,株を買いましょうという大合唱をしたものの,実際には景気は急速に悪化してきているからです。
景気一致指数 50.0%(下方修正)
先行指数   45.5%(下方修正)(略)
(引用終了)

 僕と同じくいつも悲観的な記事ばっかりのこの引用サイトですけど,これは事実だから仕方がない。衆議院選挙前からいっぱい株を買ってくださっていた外人さん達が売ってしまいたいと言っているので,個人投資家にはめこんでやろうという動きかもしれません。・・・さすがにそれは悪読みしすぎか。

 ま,しばらくは政府も株高をあおっていくでしょう。円安が進んでいるので輸出企業が儲かるからっていう理由で経済レポートもすぐに書けるでしょうし。でも,実態を無視した株高っていう状況を簡単に見逃すようでは,バブル期の反省が全く活かされていないってことですよね。確かに日本企業にはすばらしい技術をもった会社がたくさんあるんだけど,肝心の国策がこんなんじゃあ外国に札束ビラビラされて強奪されるのも仕方がないことなのかなあ。しっかりしてくれよ。

 それにしても政府はまったくトンチンカンなことばっかり言ってるね。

(Nov/14/05 産経新聞より引用開始)
【量的緩和継続 日銀に要請 中川自民政調会長】
 自民党の中川秀直政調会長は十三日,京都市内での党京都府連の会合であいさつし,財政再建への取り組みに関し「一番バッターは日銀だ。政策目標は常に政権と合致させる責任がある」と述べ,政府が求める量的金融緩和政策の継続を日銀に要請した。同時に「これが分からなければ,日銀法改正も視野に入れなければいけない」と述べ,日銀の対応次第では独立性確保を柱とする同法の改正を検討する考えを明らかにした。
 中川氏の発言は,量的緩和の解除に意欲的な日銀を牽制(けんせい)するのが狙いとみられるが,与党幹部が法改正にまで言及したのは初めて。
(引用終了)

 なんで政治家って経済がわからない人間が多いんだろう。中川には期待するところもあったけど完全にバカを露呈してしまったね。一言で言えば自民党の驕りだね。なぜ日銀が法律で政府との独立性を保証されているのかということもわからんような人間を政調会長に選ぶなんてね。そんなことだから官僚にバカにされて,彼らの作った法案を棒読みするしかできなくなるんだよ。何でもかんでも政治力でなんとかしようなんて,いつから自民党は共産党になったんだ?

 逆から考えてみようか。つまり,日銀の独立性の意義は十分わかってるけど,もうそうは言ってられない事態なんだよってことか。だったらなおさらやばいね。中央集権化と大本営発表ばっかりじゃお先真っ暗だね。IMFはそこんとこもわかってるのかもよ。

(Nov/12/05 NIKKEI NETより引用開始)
【日本,消費税率の引き上げ必要に・IMF副局長が見通し】
 国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局のダニエル・シトリン副局長は,日本が財政再建に真剣に取り組むべき時期を迎えているとし,将来の社会保障制度の財源として消費税率の引き上げが必要になるとの見方を示した。これらの見通しや提言は,14日付の機関誌IMFサーベイで公表する。
 日本経済はデフレの最終局面にあると指摘。今後2年は年率2%程度の経済成長率を維持できると見通した。日銀にはデフレ圧力が完全に消えるまで,金融の量的緩和政策を維持する必要があると提言した。
 日本で量的緩和解除のタイミングについての議論が高まっていることを踏まえ,金融市場に混乱を引き起こさないように「漸進的かつ透明性の高いやり方」で解除するよう期待を示した。
 日本は「財政赤字に取り組むため真剣に段階を踏んでゆく時期が来ている」と強調。歳出削減と同時に税制改革を実現する必要性があるとした。
(引用終了)

 さ,資産の保全に真剣に取り組んでいこうかな。機は熟したかな。  
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2005年11月11日

アメリカの住宅ローンは金利融資タイプが増加だって 日本のいつか来た道

 今日はちょっとだけ専門的な話。FX取引のドルポジションの話にも絡んできます。

(Nov/05/05 NIKKEI NETより引用開始)
【米住宅ローン、高リスク傾斜一段と】
 資産価格の上昇を当て込んでリスクの大きな種類の住宅ローンを利用する家庭が米国で増えている。将来、住宅を高値で売って返済したり、値上がりした時点で借り換えたりすることを想定して、当初の返済負担を小さくした住宅ローンで、米抵当金融協会によると、この種類が今年上半期の新規契約に占める比率は23%となり、昨年下半期の17%から上昇した。
 この住宅ローンは「金利オンリー融資」と呼ばれる。元本部分の返済を数年先とし、当初は利払いだけにしている。価格高騰で手が届きにくい物件もこの住宅ローンを使えば入手しやすくなる利点がある。ただ一定期間が経過すると返済が急激に増えるため、資産価格が期待通りに上昇しないと、焦げ付く可能性が大きくなる。
(引用終了)

 いよいよアメリカ経済の行方を本気で心配しなければいけない時期になってきたと判断して良いと思います。日本の不動産バブルが歩んだ道のりをそのまま歩んでいるかのようです。中国のバブルがはじけるのが先か,アメリカが先か微妙な情勢になってきましたね。

 上記のようなニューズがあって,さらにここのところアメリカの貿易赤字が過去最高を記録だとか,ドルにとって悪いニューズばかり出ているのにもかかわらず,ドルの下落は一時的でむしろ上昇しているのが気にかかります。はっきり言ってファンダメンタルズ無視のドル強気は不可解としか言い様がなかったのですが,いろいろ調べると原因がはっきりしてきました。

【依然続くドル高の裏にはこんな法律の影響が】
 詳しくはこのリンクコラムを読んでください。ドル強気の意味が理解できると思います。要するに駆け込み寺的なドル買いが世界中で起こっているというわけ。これは逆に言うと,来年からはファンダメンタルズに従った,つまりドル弱気の相場形成がなされるのではないかということ。だからユーロの回復を信じる人たちが仕込むべきユーロロングポジションは今がチャンスなのかもしれないということ。

 ただしこれぐらいのことは一般の投資家も考えることでしょうから,ユーロの行方も実際はどうなるかわかりません。フランスの暴動とかドイツの政局混乱とか,ユーロが越えていくべきハードルは依然として高いものがあると思われるからです。少なくとも僕はまだユーロを投資の中心にはできません。円の下落基調も続いているのでEUR/JPYロングを仕込むにしてもうま味が小さいし(何といっても金利が2%台ではスワップもおいしくない),かといってEUR/USDロングはスワップ支払いになるので長期保有はしたくない。まだまだユーロに手を出すのは早いかなあと思っています。
【仏内相また「社会のくず」発言 強硬姿勢変えず】

 おっと,ドルの話でした。僕もドルロングポジションをいくらか持っていますが,今年中には解消したほうがいいかもなあと思っています。どこまで上昇するのかはわかりませんが,下落を始めて117円を切るようなことがあればそこで利益確定しようと思っています(取得単価は平均で115円台です)。詳しくは →外為ブログ

 こういういろいろと爆弾を抱えた国の通貨を持ちすぎるのは怖いですね。だから最近はオセアニアとかGBP/CHFとかEUR/GBPに注目していまして,徐々にこのペアのポジションを高めていこうかなと思っています。・・・FXの話ばっかりやな。すみません。

 アメリカやばいんじゃね?というニューズは何もこれだけではありません。富の象徴というかアメリカの代名詞であったGMの凋落こそ,全てを物語っていると言えます。

(Nov/10/05 Bloombergより引用開始)
【米GM株は下落も4-6月期の赤字拡大、当初発表の4倍に】
 自動車メーカー最大 手の米ゼネラル・モーターズ(GM)は9日、 今年第2四半期(4ー6月)の赤字額が10億7000万ドルと、当初発表の4倍 近くだったことを明らかにした。また、会計処理の誤りのため、2001年の決算 を修正する計画も示した。
 同社が米証券取引委員会(SEC)に提出した変更後の報告書によると、 第2四半期の赤字幅の変更は、GMが保有していた富士重工業株20.1%の価値 を57%過大に評価していたためだという。また、別の届出書によると、2001年 の利益は最大で4億ドル過大に申告されていた。
(略)
 GMの損益は四半期連続で赤字となり、過去13年で最長の赤字経営が続い ている。同社は10月に、年金や退職者給付、納入業者との取引の会計処理につ いて情報提供を求める召喚状を、SECから受け取ったことを明らかにしてい た。
(略)
 決算の修正について明らかになったのは9日の米国株式市場の通常取引終 了後だった。GM株は9日、前日比1.23ドル(4.8%)安の24.63ドルで終了 した。
(引用終了)

 見方を変えれば悪質な虚偽報告です。西武の堤会長は株主の構成を虚偽報告しただけでぶち込まれたのに,決算粉飾した会社はおとがめなしってのが現実なんですかね。時価評価なんてあっという間にできる富士重工業の株価をどうやったら57%も過大評価できるってんですかね。

 ま,僕としてはアメリカ経済がどうなろうと知らんですけどね。日本の虎の子資金を奪うことばっかり考えている毛唐達が滅びようと知ったこっちゃないですよ。日本も釣られて不況になる?当たり前でしょ。ブッシュマンセーでこの数年間やってきたんだから。宗主国様は属国を切り捨てるのは早いので,案外アメリカよりも日本が先にダメになっちゃったりしてね。  
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2005年10月29日

退職給付会計から自治体財政を見たら

 今日は月に2度の勉強会。適度に酒も入ったのでタルい話題にしようかなと思っていたのですが,やっぱり無視できないニューズはどんどん載せておいた方がよいのでがんばってアップしておきます。

(Oct/25/05 YOMIURI ONLINEより引用開始)
【全職員の給与削減,1人平均年115万円…北海道提案】
 北海道は25日,危機的な財政状況を受け,月給の引き下げを求めた人事委員会の勧告とは別に,2006年度から2年間,約8万人の全道職員の月給を10%,期末・勤勉手当を15%それぞれ削減することなどを盛り込んだ独自の給与削減措置を自治労全道庁労組など職員団体に提案した。
 総務省によると,4月1日現在,島根県(部次長級),長野県(部長級),香川県(課長級)が管理職を対象に月給の10%削減を行っているが,職員すべてを対象にするのは全国で初めて。平均的な41歳道職員の年収は730万円。1人当たりの削減額は年間約115万円となる見通しだ。提案にはこのほか,管理職手当の20%削減,退職手当の5%削減,新年度から導入予定の査定昇給の特別昇給相当分の凍結が含まれている。
 高橋はるみ知事ら特別職の給与も減額。月給と期末手当を,知事が25%,副知事と出納長が20%それぞれ削減。その他の常勤特別職らは月給を15%,期末手当を18%それぞれ減らす。退職手当も10%減。職員と同じ2年間の措置とする。
 全道庁,北教組,自治労道本部で構成する「地公三者共闘会議」は「あまりにもひどい内容だ」(全道庁幹部)と反発している。交渉に入る前提として〈1〉財政危機の原因が人件費ではないことの明確化〈2〉労使合意を前提とし,一方的な条例提案は行わないこと――などを要求した。
 道は,財政再建団体への転落を回避するため,2006,07両年度で1800億円の歳入不足改善が必要となっている。
(引用終了)

 三位一体改革っていう名前負けした茶番改革の悪影響は地方に如実に現れます。大阪市なんかは全国的にたたかれているとはいえ自業自得でいい気味ではありますが,北海道は道全体の財政の危機的状況がすぐ目の前にやってきています。知事以下が英断を下したのにもかかわらず茶坊主の労組達がおきまりの反対パフォーマンスを繰り返す。北海道内で住民投票したら確実に知事の言い分が支持されるだろうことは予想できるだろうに。
 このように公務員給与の問題はかなり深くて,例えば退職金倒産が公共団体で起こってくる可能性まで指摘されています。

(Oct/14/05 Nevada経済速報より引用開始)
【退職金が払えない】
 2007年度から3年間で北海道と人口10万人以上の道内9都市の職員退職金総額が2,500億円という空前の額に達することが判明し,このままでは財源がないため,未曾有の財政危機に直面することになります。
知事は慌てて給与の引き下げ等を打ち出していますが,焼け石に水とも言え,このままいけば退職金が払えないという事態に直面することになります。
 企業でいえば,退職金倒産という事態になるのです。
 団塊の世代は退職金を沢山貰って悠々自適な年金生活を送ると巷間いわれていますが少なくともこれら地方職員は,本当に退職金が支払われるのかどうか,はらはらしながら退職の時を待つことになりますが,今後,更に財政事情が悪化するのは明らかであり,小泉政権が来年10月に交代する前に,劇的な処置がとられることになるのは必至だと言えます。
 退職金,年金をあてにした甘い生活プランが崩壊するのも時間の問題といえます。
 今回の北海道の惨状が今後,多くの自治体・企業に当てはまるのは明らかだからです。
(引用終了)

 これは本気でやばい事態です。これまでは国に泣きつけばなんとかなっていたのが,前述した三位一体改革のあおりでそのルートが断絶されたばかりか,景気回復の歩みののろい地方では自力でなんとかできるというレベルの危機ではなくなっているのです。なぜか。退職金給付に関する会計的な考察で見るとわかります。

 企業会計制度に退職給付会計という制度がありますが,今は上場企業とか大企業は必ず導入すべしとされているに留まっているのを,これを公共団体とか中小企業にも厳格に適用させたらほとんどの団体が債務超過になります。退職金は将来支払わないとイケナイお金なので「債務」ですから,帳簿に出せば資本が減少して大体の場合で債務超過になるのです(バランスシートを想像してください。負債が増えても資産が増えるわけではないので資本が減るのです。つまりそれだけ分の含み損が帳簿上に出て皆に認識されるのです)。
 北海道は現にこの状態そのものであることを公表したわけです。他の自治体なんかもこうやって退職給付会計を導入すれば同様の問題が起こってきます。なぜ大騒ぎになっていないかというと,そういう視点で指摘する習慣がないからでしょう(会計リテラシーの欠如)。それで大騒ぎになる頃にはもはや手遅れです。

 個人的には財政破綻した際の地方債はジャンクボンドになるのかどうかについてものすごく興味があります。なんだかんだ言っても最終的には国の保証が付いているものと見なされて全額弁済されるのかもしれないし,国とは別個のものだとされて全く帰ってこないかも知れない。後者であれば地方債をいろんな形で保有している地方金融(地銀,第二地銀,信金,信組,農協など)が一気に機能マヒになって,ある日突然ペイオフ発動なんてことも十分に考えられるシナリオです。前者であっても国の負担が増えまくって,「小さな政府」実現のために今やっているような構造改革でのチマチマした歳出削減の効果なんて吹き飛ばしてしまいます。どっちにしても良い話にはなりません。

 中小企業が退職金を払えないというのはある程度仕方がない(担保する法的根拠に乏しい)のですが,公務員となると話は格段にややこしくなります。退職給付会計を地方公共団体に疑似的に導入することによって,隠れていた債務を認識したときに,我が町も今の北海道とさほど変わらないということに気が付くことでしょう。賢い人は今のうちから資産保全をしっかり考えるもんです。資産運用についてはじっくり勉強していった方がいいでしょうね。  
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2005年10月24日

アメリカの景気はいいのか悪いのか? 確実に溜まってきているマグマはいつ噴出するか

 いよいよアメリカの景気がキナ臭くなってきました。もちろん根強い楽観論,他国と比べたときの相対的な割安感といったところのイケイケ論は散見されますが,それにしても短期間で悲観論の声が無視できなくなってきたようです。今日はそういう関連のニューズを採り上げます。アメリカの経済状況について知っておくことは為替でリスクをとっているFXディーラー(そんな大したもんじゃないけど)にとって必須だからです。

(Sep/17/05 NIKKEI NETより引用開始)
【米経済「悪化」が37%に・世論調査で悲観論台頭】
 米経済の先行きへの悲観的な見方が米国民の間で急速に高まっていることが,ピュー・リサーチ・センターの最新の世論調査で明らかになった。今後1年間で「米経済は悪化する」と答えた人の割合は37%で,今年5月の調査より13ポイント上昇した。昨年8月の調査では,同比率は9%にとどまっていた。
 調査は8―11日に実施した。ハリケーン被害に加え,エネルギー価格の高騰が景気見通しに暗い影を落としつつある。
(引用終了)

 ちょっと古いニューズですが,景気悪化の兆候を示すものとして記事をストックしていました。エネルギー価格の高騰は秋冬季を迎えて冗談ではすまされない影響が出てくるものと予想されます。もちろん日本国内でもです。

(Oct/23/05 NIKKEI NETより引用開始)
【米大手銀、融資攻勢のつけ・個人破産急増】
 米国の大手銀行の経営に個人破産の急増とハリケーンが重くのしかかっている。シティグループなど大手5行の7―9月期決算は、個人向け融資の焦げ付きなどで貸倒引当金が前年同期比66%増えた。好調だった投資銀行業務によって増益は確保したものの、米家計を借金漬けにしてきた融資攻勢のツケが回り始めている。
 大手5行の7―9月期決算は全行が2ケタ増益を確保した。けん引役は投資銀行業務で、全体では23%の増益。債券売買益が拡大するとともに、原油高で商品取引を通した利益も膨らんだ。
(引用終了)

 投資銀行はさすがに抜け目がない。リテール(個人向け)の赤字をカバーして増益を達成するんだからたいしたもんだ。でもアメリカの個人消費に陰りが出てきているのは確かで,日経にしては珍しく「米家計を借金漬けにしてきた融資攻勢のツケが回り始めている」なんていう表現を使っています。この破産の影響は当然,住宅ローンにも影響を及ぼしているはずですが,次のニューズを見る限りではアメリカの偉いさん達はこんなこと想定の範囲内との見解のようです。

(Oct/21/05 Bloombergより引用開始)
【米サンフランシスコ連銀総裁:住宅価格下落の衝撃は吸収可能の公算】
 米サンフランシスコ連銀のイエレン総裁は 21日、国内の住宅価格の下落は米経済にとって、「路面上のかなり大きな隆起」のように感じられるかもしれないが、その衝撃は吸収できる可能性が高い との見方を示した。
(略)
 米国経済に与える影響は「非常に大きなもの」とは ならないだろうとの見方を示し、そうしたバブルを収縮させる上で金融政策は 必ずしも最善の手段ではないと語った。
(引用終了)

 日本という良い手本がありますから,簡単にバブルを破裂させるような政策はとらないでしょう。とはいっても利上げはどんどん進んでいるわけで,アメリカ国民は金利負担増加を懸念して住宅ローンの申請が3ヶ月減少しているというニューズもありました。
 でもこれは所詮アメリカ国内の問題。そもそも以前から外国からの資金流入がなければやっていけない国ですし,日本のように恫喝すれば350兆円もの郵貯・簡保資金を提供してくれる国がある限り,外国からの資金流入(ドル買い)トレンドは崩れないでしょう。日米の金利差は開くばかりで,銀行も外貨運用を顧客に勧めやすくなっているようですし。

 一方で,国という単位で見たときは,アメリカの利上げは非常に心配ではあります。ここで言う「利上げ」は政府・FRBがコントロールできる短期金利のことですが,長期金利(要するにアメリカの国債価格)にも影響を与えますから,日本みたいにかなりの金額に上るアメリカ国債を持たされている国はたまったもんじゃありません。自由に売らせてくれないんだから損切りもできない。為替がドル高になってくれることを期待して,基本的には持ちっぱなしという運用しかさせてもらえないんだからものすごいハンデがあります。そのうえ郵貯・簡保資金でさらに好き勝手される・・・。
 ま,いい。郵政民営化は法案が通ってしまったんだから仕方がない。決まったことには従うというのが健全な民主主義だから僕は抗いませんが(そのかわり郵貯・簡保は解約しますが)いったい日本の「国益」って何なんでしょうね?

 話がそれました。このエントリで言いたかったことをまとめると,安全保障問題はともかく,消費もアメリカ一辺倒を続けていても日本は大丈夫か?ということをきっちり考える時期に来たのではないかということです。アメリカ国民に借金を押し付けて需要を煽って,世界中から魅力的な製品を持ち込んで支えてきた個人消費が,一転してブレーキがかかった時,日本は国民の資産を守るために適切な行動を取りうるかどうかという問題です。
 今のままならアメリカの恫喝でさらに資金提供を強要されるでしょう。ブッシュが京都に来て小泉首相に牛肉問題の決着を促すだろうと見られていますが,そういう動きがどんどん出てくるはず。GM,フォードの破綻寸前の状況も確実に問題視されているはず。今のままでは,年間3万人を超える多くの自殺者を出しながらもアメリカを肥えさせてきた苦労も水の泡になりかねません。まともな議論がテレビなどで交わされることを切実に願うばかりです。

 最後はおまけ。ちょっと専門的な話ですが,これが引き金になって大パニックになるってことは十分考えられるので注意しておこうというニューズ。

(Sep/13/05 Bloombergより引用開始)
【NY連銀が銀行14行招へい?クレジットデリバティブの事務処理懸念】
 9月13日(ブルームバーグ):ニューヨーク連銀は15日に開催するクレ ジットデリバティブ関連会議に同市場の主要メンバーである銀行14行を招へい している。この背景にはいまや8.4兆ドル(約929兆円)に膨れた同市場での 事務処理の滞りを金融当局が懸念していることがある。
 同会議開催については米連邦準備制度が8月24日に既に発表済み。ニュー ヨーク連銀の広報担当,ピーター・バクスタンスキー氏によれば,銀行の代表 者やリスクマネジャーとともに欧米の規制当局者が「市場慣行」について討議 するという。
 クレジットデリバティブ市場が拡大するにつれ,銀行や証券会社は事務処理 のスピード維持が困難となる。ゴールドマン・サックス・グループでマネジン グ・ディレクターを務めるE.ジェラルド・コリガン元ニューヨーク連銀総裁が 率いるグループは7月,リポートの中で,実際に企業がデフォルト(債務不履 行)に陥った場合,デフォルト・スワップの保有者が一斉に決済を急ぎ,混乱に つながる可能性を指摘している。
 カス・ビジネス・スクール(ロンドン)でクレジットリスクや決済システ ムの上級講師を務めるアリステア・ミルン氏は,「銀行業界は自分たちの利益 と急速に拡大する市場のパイ争いにあまりにも集中してきたため,事務処理問 題に注力してこなかった」と指摘。その上で,「システムも管理も会計も市場 の拡大ペースに追いついていない」と述べた。
 格付け会社フィッチ・レーティングスによると,クレジットデリバティブ 市場で最も活発な取引参加者は,JPモルガン・チェース,ドイツ銀行,ゴー ルドマン,モルガン・スタンレー,メリルリンチの5社。
 JPモルガンの広報担当,マイケル・ドーフスマン氏は,15日の会議には リスクマネジメントの副責任者ドナルド・マックリー氏とクレジットトレーデ ィング責任者のエリック・ローゼン氏が出席すると述べた。両氏はインタビュ ーには応じなかった。ゴールドマンとモルガン・スタンレーの広報担当者はコ メントを差し控えた。メリルとドイツ銀の広報担当者には連絡がついていない。
(引用終了)

 日本の一昔前の銀行と違って,あっちの国の銀行の事務処理なんて杜撰そのもの。ちょっとしたミスがチェックされずに大問題を引き起こすことだって起こらないとは限りません。この記事の続報にも目を光らせておく必要があるかもしれません。  
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2005年10月09日

日銀タナボタ!利益確定して早いとこ国庫納入してくれ。

 昨日アップするつもりが寝不足と酒が入ったためダウンしてしまいました。今日は2件続けてアップします(投稿日付をいじくって昨日投稿したことにします)。

(Oct/08/05 Sankei Webより引用開始)
【日銀の株含み益1兆円突破 財政再建に「貢献」も】
 日銀が金融危機対応として2002年11月から03年9月に金融機関から買い取った株式の含み益が、このところの株価上昇で1兆円を突破したことが8日までの第一生命経済研究所の推計で明らかになった。
 日銀は利益の一部を毎年、国庫に納めている。将来の株売却時に利益が確定すれば、最終的には国の懐が潤うことになり、財政再建への「貢献」も期待できそうだ。
 日銀による銀行保有株の買い取りは、金融不安が深刻だった時期の「危機対応」。中央銀行がリスクの高い株式を買い取るのは、国際的にも例のない大胆な政策だった。
 推計によると、日銀含み益はことし9月末時点で、3月末より約4400億円増の1兆763億円に達した。買い取り額の累計は約2兆円なので、日銀が保有する株式の時価総額は3兆円を超えたとみられる。
 日銀は買い取った株式を07年9月以降、10年間かけて段階的に売却する計画で、実現する売却益はその時の株価次第。デフレ脱却が実現し日本経済の着実な成長が続けば、さらに利益が膨らむ可能性はある。
 とはいえ現在の量的金融緩和策も含め、危機対応的な「異常政策」は二度と繰り返したくないのが日銀の本音だ。
 同研究所の熊野英生(くまの・ひでお)・主席エコノミストは「中央銀行が買えば必ず株が値上がりするわけではなく、損失リスクは常にある。日銀の株の買い入れは、一定の節度を保って実施したからこそ効果があった」と話している。
(引用終了)

 なるほど,この驚異的な株価の上昇を見よ!日銀の株価チャート

 おっと。日銀はJASDAQに上場していることは知っておいてね。
 タナボタタナボタ。さあ,個人投資家が煽られている間に早いとこ売って利益確定しておいたほうがいいんじゃない?もちろん1兆円もの含み益が出るほどの量だから全部ははけないだろうけどね。
 同じく金融の話を続けます。

(Oct/08/05 NIKKEI NETより引用開始)
【ゴールドマン・サックス証券、「郵政民営化バスケット eワラント」の取り扱い開始】
郵政民営化をテーマとした投資商品
「郵政民営化バスケット eワラント」
10月24日より取引開始

 ゴールドマン・サックス証券会社(社長:持田昌典、トーマス・K・モンタグ、所在地:東京都港区;以下「ゴールドマン・サックス証券」)は2005年10月24日(月)より、「郵政民営化バスケット eワラント」の取扱いを開始します。

●郵政民営化バスケット
 「郵政民営化関連法案」の動向にメディアが注目する中、郵政民営化の株式市場に対する影響についても関心が高まっています。
 そこで今回、郵政民営化によりメリットを享受すると思われる銘柄群を対象とした「郵政民営化バスケット eワラント」を開発いたしました。(略)
 「バスケット eワラント」は、市場で動向が注目されている、キーワードでカテゴリー化される会社群(バスケット)を1つの投資対象として指数(インデックス)を算出し、それを投資対象とするeワラントで、ゴールドマン・サックス証券では2000年12月より取扱いを開始しております。その構成テーマは、ゴールドマン・サックス証券のグループ会社であるゴールドマン・サックス・インターナショナルが機動的に選択し、また発行後は電子的マーケット・メイクを行います。

・発行されるeワラントの詳細
 今回発行されるeワラント4銘柄は、対象バスケット・インデックスの価格が上昇すると利益が期待できるコール型2銘柄と、対象バスケット・インデックスの価格が下落すると利益が期待できるプット型2銘柄の合計4銘柄になります。(略)

●「eワラント」の投資商品としての主な特徴
1.株式投資に比べて一般に大きなリターンの可能性に挑戦できます。
2.9:00から23:50まで取引可能です。
3.少額投資が可能です。
(略)
 「郵政民営化バスケット eワラント」の取扱いは、イー・トレード証券株式会社、カブドットコム証券株式会社、松井証券株式会社、マネックス・ビーンズ証券株式会社、楽天証券株式会社(50音順)の5社にて行ないます。(略)
(引用終了)

 ネット系證券会社での売り出しですか。ゴールドマン・サックスは郵貯が資金運用を委託している会社の一つですから,郵政民営化後は運用指示次第でワラントの価値を挙げたり下げたりできそうな気もしますが・・・。ましてやeワラントなんてハイリスクハイリターンの代表格ですから,くれぐれも安易に飛びつかない方が身のためだと思います。ま,投資は自己責任です。これ以上は申しません。  
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2005年10月04日

株価回復!でも本当に「景気」って回復しているのかしらん?

 今日は「景気は回復しているのか?」という話。3つの記事を見比べてみよう。

(Sep/30/05 共同通信より引用開始)
【株含み益が半年で2兆円増 大手行、5兆4千億円に】
 みずほフィナンシャルグループ、三菱東京フィナンシャル・グループなど大手7銀行グループが保有する9月末の株式含み益の総額が、半年前の3月末に比べて2兆円近く増加、約5兆4000億円に達したことが第一生命経済研究所の試算で30日分かった。大手生命保険会社4社は同日、9月末の株式含み益の合計が3月末より約1兆9000億円増加し、7兆4000億円になったことを明らかにした。
(略)
 銀行が保有している株式の含み益は、銀行の財務の健全性を示す自己資本比率を一定程度、押し上げる効果があるため、貸し出し余力の拡大につながる。第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「各行とも中小企業向けを中心に貸し出しが増えるのではないか」と予測している。(略)
(引用終了)

 自民党爆勝,小泉再選で主に外人からの強い買いが続いている東京株式市場。原油高高騰によるオイルマネーの還流も手伝って今日の日経225の終値は13,700円の大台に乗せたようです。これはこれでめでたいことです。
 しかし,この記事だけで景気が回復していると判断していいのでしょうか?
 ※株価は景気の先行指数という考えから,このような判断がされること自体は自然です。

 ここで,重要な問い掛けをしたいと思います。この記事で言う「景気」と我々が日々感じている「景気」とは同じものでしょうか?この問い掛けを胸に抱きつつ,次の記事を読んでみよう。

(Sep/30/05 Sankei Webより引用開始)
【原油高騰 電気・ガスも値上げ 冬の家計を直撃】
 原油価格の高騰に伴い、家庭で使うエネルギーコストの上昇が目立ってきた。灯油価格は十三週連続で値上がりし、十月からは電気料金や一部地域の都市ガス料金も一斉に値上げされる。原油価格は一時に比べれば落ち着いているが、依然として歴史的な高値水準にあり、原油価格がこのまま高止まりすれば、電気・ガス料金は来年一月からさらに値上げされる可能性もある。暖房の需要期を迎え、エネルギーコストの上昇は冬場の家計を直撃しそうだ。
 石油情報センターによると、灯油の店頭価格(全国平均、二十六日現在)は、十八リットル当たり千二百四十四円。前週から二円上昇した。配達価格も一円値上がりし、千三百四十円となった。灯油価格は昭和五十七年に約千八百円まで上昇したことがあるが、石油情報センターが調査を始めた六十二年四月以降では七月第一週に最高値を更新し、その後も値上がりが続いている。
(略)
 一方、電気料金や都市ガス料金も十月から値上げされる。世界的な原油価格の上昇に伴い、火力発電の燃料や都市ガスの原料として使われている液化天然ガス(LNG)の輸入価格も上昇しているためだ。
 LNGの価格上昇は、電気やガス料金の値上げに直結する。LNGや原油など燃料・原料費の変動を自動的に料金に反映させる「燃料・原料費調整制度」により、四半期ごとに調整されているためだ。この制度によって電力十社と都市ガス大手三社は十月から標準家庭で月額五十四−二百一円値上げするが、電気事業連合会の勝俣恒久会長は「(現状の原油高が続けば)来年一月からもおそらく値上げになる」とみる。
(略)
(引用終了)

 どうですか?同じ「景気」でも指しているものが違うことがうっすらとわかってきたかと思います。これは文系の人たちがよく使うやり方で,言葉の定義を(おそらく故意に)曖昧にして,読者や一般大衆の誤解を誘おうというというものです。ごめん,文系云々という限定は言い過ぎかな。言葉の定義が曖昧だと,同じニューズを目にしても「景気は回復している」「景気は回復していない」の両方ともの解釈が可能になります。

 株価が上昇している = 景気が回復している
 原油高騰が家計直撃 = 景気は回復していない(もしくは回復しそうにない)

 どちらも正しい。ただし「景気」の遣われ方が違う。前者の「景気」とは,株価という尺度が算出(現出)されるサンプルとしてわずかな上場企業の成績を指すものであり,後者は大多数の一般ピープルや中小企業が主観的に感じる気持ちを指すものであるということの峻別が大事なのです。

 もっと言えば,前者は客観的な数字であり様々な比較作業を通じて科学的な「回復している,していない」という論証が可能である反面,ごくわずかなサンプルでの判断に過ぎないという大きな欠点を抱えています。
 後者は人それぞれの全くの主観によるところが多く,小泉信者のような楽観的立場の人もいれば,社会主義者や共産主義者もいるわけで,それらを平均したものというぐらいの捉え方しかできません。しかしこのような非科学的なものを根拠に「景気が回復云々」とは言えないので,客観化されたマクロのデータをどこかから引っ張り出して論説を補完するわけです。上の原油高騰による家計直撃のニューズがそれにあたります。つまり,こうすることで多数のサンプルを対象とした,多数の人々が感じる「景気」についてより科学的に論証できるわけですね。

 このエントリで僕が何を主張しようとしているかお分かりになってきたかと思います。
 一つは,言葉の定義を曖昧にするなということ。
 一つは,ごく少数にしか当てはまらない指標で日本全体を語ったことにするなということ。
 一つは,一つの記事だけで物事の判断をするなということ。

 ちなみに理系なら曖昧さは極力カットされます。もちろん100,000,001で割り算をするときに100,000,000で割ってしまっても良いとする論法はありますが,当然,大勢に影響を与えないからという前提があるからです。おっと,別に文系を批判するわけではないですよ。文系でも学問的には曖昧さは許されませんから。ここでは,おそらく故意に曖昧な言葉を使うことによって読者を何かの主張に導きたいという考えがあるのではないかということを言いたいだけです。それが何かははっきりわかりません。おそらく,「だから皆も株をやろう!」という主張なんだとは思いますが。

 少数サンプルの結果で大衆を惑わす。「中国株で資産が10倍になった!」「1ヶ月で資産が3倍になる投資法」・・・よく見かけませんか?こういうタイトルの本。儲けてるのはごく一部ですよ。煽られて理性を失った大衆のほとんどがバブルで大損したことを忘れてはいけません。

 ま,株をするならここまで理解した上でやりましょう。煽り記事に煽られずに理性を保ちながらやりましょう。別に僕は株式取引をするなと言っているわけではありませんから。十分な知識と理性があって引き際を冷静に見極めれる人だけがやるべきだとは思いますが。
 僕も勉強する時間があればやってみたいとも思いますが,如何せんあまり興味がないのと,日本の投資税制が不備だらけなのと,その他もろもろの理由で今はするつもりはありません。今やらないでいつやるの?という意見はよく聞きます。でも,勧められて損失を出したときに勧めた人に損失補填を要求できるのであればやってもいいです。知らないことに大金を投じたくはありません。

 さて,景気回復を疑う僕への反論を予想して一つお断りを入れておこう。株価が上がれば景気は良いのだと直接証明できるのはアメリカだけですよという話。

「株が上がれば景気が良い」というのはアメリカ国民にはある程度当てはまります。何故かわかりますか?国民の資産配分を思い出せばすぐ答えがわかります。具体的な数字は各自で拾ってもらうとして,アメリカ国民は半分ぐらい上場株式をもっています。日本人の資産配分では上場株式は数%でほとんどが預貯金。株価が上がれば含み益が増えていってさらに株を買おうかという余力が生まれる国がアメリカ。株価が上がっても家計所得に与える影響がほとんどない日本。株価で「景気」を語る手法はアメリカでは通用しても日本では通用しにくいのです。

 最後に衝撃的な事実を紹介して終わります。

(Sep/27/05 Nevada経済速報より引用開始)
【景気の悪化と個人の株売り・株価上昇】
景気はじわりじわり悪化の道を辿っていますが、マスコミでは景気は回復中との大見出しが踊っています。
個人消費も増加していると報じられていますが、以下のデータはどうでしょうか?

・8月のデパート売り上げ高(全国)  
 マイナス0.7%(総額5,168億円)

・8月のスーパー売り上げ高(全国) 
 マイナス2.9%(総額1兆1,673億円)

・8月の外食売り上げ高(全国)    
 マイナス1.5%(既存店ベース)

どこが増えているといえるのでしょうか?
しかも売り上げ高が多いスーパーは18ヶ月連続マイナスとなっており、外食も5ヶ月連続マイナスとなっており、一向に増える気配はありません。
デパートは名古屋万博の影響もあり、需要を先食いしていましたが、いまや失速し、9月は更なる大幅な落ち込みを見せるはずです。

このような中、株価だけはバブル相場の様相を見せていますが、報道されているように本当に個人が買っているのでしょうか?
昨日発表になりました9月第2週の投資家別売買代金はどうなっていたでしょうか?

個人 (現金) 3,299億円の<売り越し>
個人 (借金)   194億円の<買い越し>
投信         127億円の<売り越し>

個人は“これでもか”という程の売りを出し、今の市場から逃げているのがこの数字から読み取れ、猛然と売りを出し、市場から逃げている姿がここにあります。
しかしながら、マスコミは【個人が株を買っている】と煽っているのです。
(略)
事実と報道がここまで乖離するとその後にくる反動は恐ろしいものがあると言えます。
相場の怖さを目の当たりにして震撼する日も近いかも知れません。
(引用終了)  
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2005年09月20日

『トップ・レフト 〜ウォール街の鷲を撃て〜』

5fa86ceb.jpg黒木亮『トップ・レフト 〜ウォール街の鷲を撃て〜』角川文庫 お勧め度★★★★
(内容紹介はじめ)
 日系メーカーのトルコ法人による大型融資案件がもちあがり,シンジゲートローンの主幹事(トップ・レフト)を目指して世界のトッププレイヤー達による激烈な競争が始まった。境遇も思想も異なる二人の主人公のそれぞれの狙いは何か。思わぬTOBでの退却,それを挽回するための驚くべき策謀。敵味方が入り乱れ,社会情勢に翻弄されながらも1本のディールは動いていく。最後まで気を抜けない国際金融のダイナミズムを体験せよ!
(内容紹介おわり)

 専門用語が飛び交う国際金融の世界。そこは一握りのトップエリート達が集い策謀を巡らせて覇を競う場です。ちなみに僕が5年間働いたドメスティックな金融の世界とは全くレベルの異なった,いわば雲の上の人たちの主戦場でもあるわけですが,本書は僕があこがれつつも体験できなかった世界の大きさと厳しさをまざまざと見せつけてくれました。僕があのまま目一杯勉強していても到底彼らには敵わなかっただろうなあという読後の憔悴感。それを体験できただけでも本書を読んだ価値があったかなとさえ思います。

 本書は,シンジゲート・ローンの主幹事(専門用語でトップ・レフトと言う)を巡る銀行同士の攻防の激しさや,ボロワー(借り手)との条件交渉,主幹事を獲得してからの様々な障害との闘いなどが小説という形で直に体験できる良書です。銀行員の,しかもほんの一部の人間しか体験できない話をまるでわが事のように疑似体験できるという本書の役割は,現役の銀行員はもちろん,多くのビジネスマンにとっても有益であろうと思われます。シンジゲートローンを初めて扱う新米銀行員にとっては銀行側の論理を学んで交渉に活かせる場面は多いですし,逆の立場であるボロワー側の財務担当者にとっても交渉の焦点をどこに置くべきかというような視点も養われるからです。

 ただし,金融に興味がない人には本書の内容は難しくて面白くないでしょうから,お勧め度は★4つにしておきます。別に本書の内容がわからなくても生きていけますし,知ってしまったら余計に金融が嫌いになることも予想されますし。本書は最後の最後に「あっ」と言わせる仕掛けがあちこちに仕込まれており,実は細部まで読み込まないとその面白さがわからなくなっていたりしますので,やっぱり金融に興味がある人を中心にお勧めしたいと思います。

 内容を簡単に紹介しましょう。
 本書の主人公は二人。邦銀のロンドン支店で外銀とバリバリ闘っている今西と,十数年前に今西と同じ銀行に勤めていて外銀へ転職した龍花です。龍花は邦銀のバカバカしい官僚主義のせいで行内で散々な目に遭わされ,ようやく決別して国際金融の中心プレイヤーである外資系投資銀行へ転職するわけですが,もといた銀行にいつかは復讐してやろうと企んでいたところに,元同僚の今西が手がける案件と遭遇するわけです。今西も邦銀の経営方針に疑問を抱きながらも粛々と自分の務めを果たしている。この立場の違う二人がどのような攻防を見せるのか。
 今西があらゆる根回しをして貴重な情報源をたどり,日本の優良会社のトルコ現地法人の大型投資案件への融資を見つけて積極的にアプローチすると,龍花は外銀の雄である地位を利用してさらに魅力的な条件をボロワーに提示する。そして国際金融のイロハがわからない現地法人の財務担当者をたらし込んだ龍花が勝つかなと思っていたところに,その外銀に対するTOBがかかって,結局は邦銀がトップ・レフト(主幹事)の地位を得る。
 しかし物語はここで終わりではない。龍花の邦銀へ対する復讐心はこんなことでは消えない。彼はさらなるトルコの大型案件を発掘してあらゆる手段を使って案件をつぶしにかかる。ここにエマージング・マーケットとしてのトルコのリスクがクローズアップされて,思っても見なかった事件が引き起こされる・・・。

 物語は最後の最後にさらなる意外な結末を迎えるのですが,著者はその演出に,よく言われてきた「日本では投資銀行は育たなかった」という命題へのアンチテーゼとして,ある業種の存在を持ち出します。そこにはその業種が日本において投資銀行の代わりを担ってきたことへの称賛が含まれているのですが,だらしない邦銀を描く一方で,日本全体の経済がだらしなかったのではなかったというメッセージが込められているのです。これは不勉強な僕には目が覚める思いでした。

 あらすじを全部書くと面白くないのでここらでやめましょう。いやあ,世界は広いなあ。トルコの通貨の決済方法がドルと違うということや,どれぐらいのインパクトで相場が動くのかなど,いろいろと勉強させてもらいました。一方では邦銀の内部でのバカらしい出世競争とか責任転嫁だとかも物語に花を添えるものとして描かれているのも面白い。久しぶりにハマった経済小説でした。  
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2005年09月16日

新BIS規制の恐怖! 日本国債は新勘定に資産が移動する際に売られる理由

 どうあがいても決まるっちゅうねん,という声が聞こえてきそうな郵政民営化法案ですが,僕はやっぱり最後の最後まで問題点の指摘をしていきたいと思っています。ネット上あちこちで展開される,数々の法案の問題点が実は杞憂に過ぎなければいいのですが,僕にしてみれば今の時点で何も書かずに,問題が起こってから「ほれみたことか」なんていうセリフを吐きたくない。日本国を本当に愛するということはどういうことなのか。真の愛国者の主張と,本音は反対だけど小泉に睨まれたら怖いから賛成みたいな人間の主張との,背負っているものの違いを見せつけてやろう。

 いつも僕が勉強させていただいていて,このブログでも何度か紹介したことのあるサイトに「株式日記と経済展望」というページがあります(このブログの右カラムにリンクあり)。テーマによってはもちろん僕の主張と異なる部分はありますが,TORAさん(管理人さん)の,日本はどうすべきかというブレることのない視点にはいつも感心しきりです。昨日はこのサイトで秀逸な論文が紹介されていましたので,これから一部を引用させていただきます(引用の引用になりますが)。

(Sep/14/05 河宮信郎さん(中京大学経済学部教授)からML[citizens-public](市議調査研究費の情報公開を求める名古屋市民の会)への投稿より引用開始)
【「郵政改革」幻想完勝の衝撃波−不可避となった財政破綻】
(略)
2.小泉首相の「郵政改革」幻想と欺瞞的煽動
(略)
 第二に、郵貯簡保が「民営化可能」というのが幻想である。まず、自己資本の調達ができないであろう。世界最大となる金融機関にだれが十分な自己資金を供与できるか(まさか、自己資本の資金を国債発行で調達するわけにもいくまい)。
 郵貯は、低利国債を大量に抱えている。これは、BIS(国際決済銀行)の考え方では「不健全な金融機関」と認定される。実際、BIS(国際決済銀行)が06年末に導入する新国際ルールでは、「債権を大量に抱える銀行」を「当局の監視・指導下」に置くよう要請する。とくに、日本国債のような超低金利の債権には、「金利上昇→価格低落」という向きの「変動」しか起こらない(いわば経営危機の時限爆弾)。新BISルールのもとで、郵政機関は「民営化・会社設立」と同時に「当局の監視・指導下」に置かれるであろう。しかし、郵貯簡保の資金を食い荒らし、国債だらけにした犯人は歴代政府である。
政府に監視・指導を任せてよいか。
(引用中断)

 新BISの内容については以前務めていた銀行の同期が日銀・財務省との交渉を担当しているので,先日上京したときにいろいろ教えてもらっていたのですが,ここまで具体的なルールが決まりそうだということは知りませんでした。何にせよ,民営化したらBIS規制で国の管理下におかれるかもしれないらしい。これだけで民営化する意味は吹っ飛んでしまうわけですが,実はこの論文には大きな見落としがあります。わかりますか?

 実は新しく作られる郵貯銀行は新勘定しかもてません。つまり今国民が預けている郵貯や簡保は旧勘定扱いで公社承継法人という6番目に作られる会社のものになる。同様に今運用している資産である日本国債なども旧勘定扱いであり,新しい郵貯銀行のものではない。これは郵政民営化の基本方針」にしっかり書かれてあるので時間がある人は確かめてください。新しい郵貯銀行はその旧勘定の「運用」を任されるだけの投資顧問銀行のようなものなので,大量の債券を有するわけでなく,BISの新しい規制にもひっかからない。だから民営化されてすぐに当局の監視・指導下に入るわけではない。

 ではどうしてこのパラグラフを紹介したのかと言うと,書いた本人の河宮教授は気付いていないけど,ものすごい内容が隠れているからです。結論を簡単に言おう。「BIS規制を楯にして日本国債は合法的に売られる」ということです。
 わかりやすく謎解きをします。旧勘定にある日本国債の運用を任されている新郵貯銀行は,国債が満期を迎えたり期中で売却した後,その資金で新たに資産を購入しますが,これは新勘定に入ります。ここで,BIS規制があるので国債は変えませんと言えばどうだろうか。仕方ないね,アメリカの投資信託を買おうかということになる(実際は「やらせ」だから「仕方がない」なんてセリフは表面上だけ)。これが続けば郵貯の国債残高がどんどん減る。

 理由はBIS規制。民営化の基本方針が「自由な運用」であるだけに当局も強く言えないというのもポイントになるでしょう。そして郵貯の国債保有残高の減少に気付いた生保・銀行がとる行動は・・・。これまで絶妙というか微妙なバランスの上でようやく成り立っていた国債市場が大混乱に陥るのは時間の問題ですね。ま,せめてもの救いは,BIS規制により,一方的にアメリカ国債を買うことも許されないということぐらいですかね。でもそんなものボンド中心の別ファンドを作ってそこに投資してしまえば迂回できるだけなんですがね。
 郵貯銀行の運用担当者もそこまで頭が回って日本国を愛する人だったら,同じ手法で日本国債を守るんだろうけど。たぶんそういう提案を上司にした時点で飛ばされるわな。「そんな利回りの低い証券に投資するなんて何考えてるんだ?」ってな怒号を添えられて。

 あんまり長々と書くと読むのがしんどいと怒られましたので(笑),今日はここまで。  
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2005年09月15日

郵政民営化勉強会を終えて・・・結論部分を紹介!

 昨日の郵政民営化勉強会はなかなか好評でした。レポート15枚,資料20枚以上に及ぶ知識の結晶をぶつけてきましたが,金融には触れる機会が少なかった参加者の皆さんにもおおむね理解が得られた(と思われる)ので,やってよかったなと思います。今日は僕の主張をまとめた部分を紹介するのと,参考にさせていただいたサイトなどのリンクを貼っておきます。資料のアップはちょっと時間をください(そもそもこのブログにアップできるのかどうか技術的にやり方がわからない)。ま,何度も書きますけどこの法案は通っちゃうんだよなあ。今更なあっていう気持ちが強いのですが,後々に自分の主張を振り返って反省できるようという目的で記録しておきます。

(勉強会資料より引用開始)
    民営化法案をじっくり見ると,大蔵族である小泉首相は,旧大蔵省の財政運営の失敗を郵政に責任転嫁しているように感じられる。それほど,ばら色の未来を説く政府の主張は曖昧で誤りも多い。
    例えば,郵政公社がもつ国債のシェアは暴落を誘発できるほど大きすぎて簡単に売れない。国債を売らなければ資金は官→民に流れないのだが。
    また財政再建が進むというのも嘘。国営のままなら利益処分は全て国が行えるが,株式会社になったらせいぜい40%の法人税しか国庫に入らない。
    さらに財投債という名の国債が発行される限り,郵政民営化しても存在意義のないムダな特殊法人に金が流れる事態は変わらない。実は現行法上でやろうと思えば改革はできるのだが,財務省はそれをやらずに郵政に責任転嫁している。そして出来たのがこの法案。

    驚くべきことに郵貯・簡保の新会社の株は100%売却される。330兆円の資産の運用も他人任せであることが決まっている。自分が集めたお金を自分が運用できないように法律が縛っている。
    このリスクは2つ。株を握った者が本来国庫に入るべき利益を手に入れること。そして運用を任された会社が国債を自由に売却できること。
    民営化して国債を自由に売らせるというのは国家破壊行為である。

    ただし改革は必要である。小泉流のやり方では国に入るはずのお金が外に出ていくし,悪意ある者が国債を暴落させて恐慌を起こすことができてしまうのでダメなのだ。
    法外な高金利で運用できた預託金が2008年にはゼロになる。これで郵政公社の利益はほとんど吹き飛ぶ。低利の国債運用だけでは赤字も免れまい。
    さらに主力の調達手段である「定額貯金」の商品設計が今後の金利上昇リスクを勘案したものになっておらず,金利上昇によって国債下落・調達金利上昇のダブルパンチで一気に資本がなくなる可能性もある。

    正しい改革は例えばこうだ。今回の法案で旧勘定と呼ばれる部分の貯金・保険で調達した資金を別組織(国債運用しかしない国策会社)に移す。その組織は当然,国が管理して運用の外部委託などはさせない。貯金の新規調達や預け替えも受付けるが「定額貯金」は廃止。
    郵便や窓口業務は民間へ完全開放。
    過疎地などの問題は新たに国営法人を作って税金で運営する。


    とにかく330兆円の運用を他者任せにしないこと。国債の運命は国の運命である。財務省は責任を最後まで果たす義務がある。
    しかし結局はいつか日銀引受けをしなければならない時が来るだろう。そしてハイパーインフレになろう。
    あるいはその前に地震とかのドサクサで,その日が早く訪れるかもしれない。


(参考リンク)

よくわかる郵政民営化論
http://www.geocities.jp/dokodemodoa_jp/new_page_4.htm

Speak Easy 社会版
http://blog.livedoor.jp/manasan1/

マーケットの馬車馬
http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/

ジャパン・ハンドラーズとアメリカ政治情報
http://amesei.exblog.jp

副島隆彦の学問道場
http://soejima.to/

西尾幹二のインターネット日録
http://nishio.main.jp/blog/  
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