2005年10月29日

退職給付会計から自治体財政を見たら

 今日は月に2度の勉強会。適度に酒も入ったのでタルい話題にしようかなと思っていたのですが,やっぱり無視できないニューズはどんどん載せておいた方がよいのでがんばってアップしておきます。

(Oct/25/05 YOMIURI ONLINEより引用開始)
【全職員の給与削減,1人平均年115万円…北海道提案】
 北海道は25日,危機的な財政状況を受け,月給の引き下げを求めた人事委員会の勧告とは別に,2006年度から2年間,約8万人の全道職員の月給を10%,期末・勤勉手当を15%それぞれ削減することなどを盛り込んだ独自の給与削減措置を自治労全道庁労組など職員団体に提案した。
 総務省によると,4月1日現在,島根県(部次長級),長野県(部長級),香川県(課長級)が管理職を対象に月給の10%削減を行っているが,職員すべてを対象にするのは全国で初めて。平均的な41歳道職員の年収は730万円。1人当たりの削減額は年間約115万円となる見通しだ。提案にはこのほか,管理職手当の20%削減,退職手当の5%削減,新年度から導入予定の査定昇給の特別昇給相当分の凍結が含まれている。
 高橋はるみ知事ら特別職の給与も減額。月給と期末手当を,知事が25%,副知事と出納長が20%それぞれ削減。その他の常勤特別職らは月給を15%,期末手当を18%それぞれ減らす。退職手当も10%減。職員と同じ2年間の措置とする。
 全道庁,北教組,自治労道本部で構成する「地公三者共闘会議」は「あまりにもひどい内容だ」(全道庁幹部)と反発している。交渉に入る前提として〈1〉財政危機の原因が人件費ではないことの明確化〈2〉労使合意を前提とし,一方的な条例提案は行わないこと――などを要求した。
 道は,財政再建団体への転落を回避するため,2006,07両年度で1800億円の歳入不足改善が必要となっている。
(引用終了)

 三位一体改革っていう名前負けした茶番改革の悪影響は地方に如実に現れます。大阪市なんかは全国的にたたかれているとはいえ自業自得でいい気味ではありますが,北海道は道全体の財政の危機的状況がすぐ目の前にやってきています。知事以下が英断を下したのにもかかわらず茶坊主の労組達がおきまりの反対パフォーマンスを繰り返す。北海道内で住民投票したら確実に知事の言い分が支持されるだろうことは予想できるだろうに。
 このように公務員給与の問題はかなり深くて,例えば退職金倒産が公共団体で起こってくる可能性まで指摘されています。

(Oct/14/05 Nevada経済速報より引用開始)
【退職金が払えない】
 2007年度から3年間で北海道と人口10万人以上の道内9都市の職員退職金総額が2,500億円という空前の額に達することが判明し,このままでは財源がないため,未曾有の財政危機に直面することになります。
知事は慌てて給与の引き下げ等を打ち出していますが,焼け石に水とも言え,このままいけば退職金が払えないという事態に直面することになります。
 企業でいえば,退職金倒産という事態になるのです。
 団塊の世代は退職金を沢山貰って悠々自適な年金生活を送ると巷間いわれていますが少なくともこれら地方職員は,本当に退職金が支払われるのかどうか,はらはらしながら退職の時を待つことになりますが,今後,更に財政事情が悪化するのは明らかであり,小泉政権が来年10月に交代する前に,劇的な処置がとられることになるのは必至だと言えます。
 退職金,年金をあてにした甘い生活プランが崩壊するのも時間の問題といえます。
 今回の北海道の惨状が今後,多くの自治体・企業に当てはまるのは明らかだからです。
(引用終了)

 これは本気でやばい事態です。これまでは国に泣きつけばなんとかなっていたのが,前述した三位一体改革のあおりでそのルートが断絶されたばかりか,景気回復の歩みののろい地方では自力でなんとかできるというレベルの危機ではなくなっているのです。なぜか。退職金給付に関する会計的な考察で見るとわかります。

 企業会計制度に退職給付会計という制度がありますが,今は上場企業とか大企業は必ず導入すべしとされているに留まっているのを,これを公共団体とか中小企業にも厳格に適用させたらほとんどの団体が債務超過になります。退職金は将来支払わないとイケナイお金なので「債務」ですから,帳簿に出せば資本が減少して大体の場合で債務超過になるのです(バランスシートを想像してください。負債が増えても資産が増えるわけではないので資本が減るのです。つまりそれだけ分の含み損が帳簿上に出て皆に認識されるのです)。
 北海道は現にこの状態そのものであることを公表したわけです。他の自治体なんかもこうやって退職給付会計を導入すれば同様の問題が起こってきます。なぜ大騒ぎになっていないかというと,そういう視点で指摘する習慣がないからでしょう(会計リテラシーの欠如)。それで大騒ぎになる頃にはもはや手遅れです。

 個人的には財政破綻した際の地方債はジャンクボンドになるのかどうかについてものすごく興味があります。なんだかんだ言っても最終的には国の保証が付いているものと見なされて全額弁済されるのかもしれないし,国とは別個のものだとされて全く帰ってこないかも知れない。後者であれば地方債をいろんな形で保有している地方金融(地銀,第二地銀,信金,信組,農協など)が一気に機能マヒになって,ある日突然ペイオフ発動なんてことも十分に考えられるシナリオです。前者であっても国の負担が増えまくって,「小さな政府」実現のために今やっているような構造改革でのチマチマした歳出削減の効果なんて吹き飛ばしてしまいます。どっちにしても良い話にはなりません。

 中小企業が退職金を払えないというのはある程度仕方がない(担保する法的根拠に乏しい)のですが,公務員となると話は格段にややこしくなります。退職給付会計を地方公共団体に疑似的に導入することによって,隠れていた債務を認識したときに,我が町も今の北海道とさほど変わらないということに気が付くことでしょう。賢い人は今のうちから資産保全をしっかり考えるもんです。資産運用についてはじっくり勉強していった方がいいでしょうね。

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/p-5796189/50172425