2005年10月24日

アメリカの景気はいいのか悪いのか? 確実に溜まってきているマグマはいつ噴出するか

 いよいよアメリカの景気がキナ臭くなってきました。もちろん根強い楽観論,他国と比べたときの相対的な割安感といったところのイケイケ論は散見されますが,それにしても短期間で悲観論の声が無視できなくなってきたようです。今日はそういう関連のニューズを採り上げます。アメリカの経済状況について知っておくことは為替でリスクをとっているFXディーラー(そんな大したもんじゃないけど)にとって必須だからです。

(Sep/17/05 NIKKEI NETより引用開始)
【米経済「悪化」が37%に・世論調査で悲観論台頭】
 米経済の先行きへの悲観的な見方が米国民の間で急速に高まっていることが,ピュー・リサーチ・センターの最新の世論調査で明らかになった。今後1年間で「米経済は悪化する」と答えた人の割合は37%で,今年5月の調査より13ポイント上昇した。昨年8月の調査では,同比率は9%にとどまっていた。
 調査は8―11日に実施した。ハリケーン被害に加え,エネルギー価格の高騰が景気見通しに暗い影を落としつつある。
(引用終了)

 ちょっと古いニューズですが,景気悪化の兆候を示すものとして記事をストックしていました。エネルギー価格の高騰は秋冬季を迎えて冗談ではすまされない影響が出てくるものと予想されます。もちろん日本国内でもです。

(Oct/23/05 NIKKEI NETより引用開始)
【米大手銀、融資攻勢のつけ・個人破産急増】
 米国の大手銀行の経営に個人破産の急増とハリケーンが重くのしかかっている。シティグループなど大手5行の7―9月期決算は、個人向け融資の焦げ付きなどで貸倒引当金が前年同期比66%増えた。好調だった投資銀行業務によって増益は確保したものの、米家計を借金漬けにしてきた融資攻勢のツケが回り始めている。
 大手5行の7―9月期決算は全行が2ケタ増益を確保した。けん引役は投資銀行業務で、全体では23%の増益。債券売買益が拡大するとともに、原油高で商品取引を通した利益も膨らんだ。
(引用終了)

 投資銀行はさすがに抜け目がない。リテール(個人向け)の赤字をカバーして増益を達成するんだからたいしたもんだ。でもアメリカの個人消費に陰りが出てきているのは確かで,日経にしては珍しく「米家計を借金漬けにしてきた融資攻勢のツケが回り始めている」なんていう表現を使っています。この破産の影響は当然,住宅ローンにも影響を及ぼしているはずですが,次のニューズを見る限りではアメリカの偉いさん達はこんなこと想定の範囲内との見解のようです。

(Oct/21/05 Bloombergより引用開始)
【米サンフランシスコ連銀総裁:住宅価格下落の衝撃は吸収可能の公算】
 米サンフランシスコ連銀のイエレン総裁は 21日、国内の住宅価格の下落は米経済にとって、「路面上のかなり大きな隆起」のように感じられるかもしれないが、その衝撃は吸収できる可能性が高い との見方を示した。
(略)
 米国経済に与える影響は「非常に大きなもの」とは ならないだろうとの見方を示し、そうしたバブルを収縮させる上で金融政策は 必ずしも最善の手段ではないと語った。
(引用終了)

 日本という良い手本がありますから,簡単にバブルを破裂させるような政策はとらないでしょう。とはいっても利上げはどんどん進んでいるわけで,アメリカ国民は金利負担増加を懸念して住宅ローンの申請が3ヶ月減少しているというニューズもありました。
 でもこれは所詮アメリカ国内の問題。そもそも以前から外国からの資金流入がなければやっていけない国ですし,日本のように恫喝すれば350兆円もの郵貯・簡保資金を提供してくれる国がある限り,外国からの資金流入(ドル買い)トレンドは崩れないでしょう。日米の金利差は開くばかりで,銀行も外貨運用を顧客に勧めやすくなっているようですし。

 一方で,国という単位で見たときは,アメリカの利上げは非常に心配ではあります。ここで言う「利上げ」は政府・FRBがコントロールできる短期金利のことですが,長期金利(要するにアメリカの国債価格)にも影響を与えますから,日本みたいにかなりの金額に上るアメリカ国債を持たされている国はたまったもんじゃありません。自由に売らせてくれないんだから損切りもできない。為替がドル高になってくれることを期待して,基本的には持ちっぱなしという運用しかさせてもらえないんだからものすごいハンデがあります。そのうえ郵貯・簡保資金でさらに好き勝手される・・・。
 ま,いい。郵政民営化は法案が通ってしまったんだから仕方がない。決まったことには従うというのが健全な民主主義だから僕は抗いませんが(そのかわり郵貯・簡保は解約しますが)いったい日本の「国益」って何なんでしょうね?

 話がそれました。このエントリで言いたかったことをまとめると,安全保障問題はともかく,消費もアメリカ一辺倒を続けていても日本は大丈夫か?ということをきっちり考える時期に来たのではないかということです。アメリカ国民に借金を押し付けて需要を煽って,世界中から魅力的な製品を持ち込んで支えてきた個人消費が,一転してブレーキがかかった時,日本は国民の資産を守るために適切な行動を取りうるかどうかという問題です。
 今のままならアメリカの恫喝でさらに資金提供を強要されるでしょう。ブッシュが京都に来て小泉首相に牛肉問題の決着を促すだろうと見られていますが,そういう動きがどんどん出てくるはず。GM,フォードの破綻寸前の状況も確実に問題視されているはず。今のままでは,年間3万人を超える多くの自殺者を出しながらもアメリカを肥えさせてきた苦労も水の泡になりかねません。まともな議論がテレビなどで交わされることを切実に願うばかりです。

 最後はおまけ。ちょっと専門的な話ですが,これが引き金になって大パニックになるってことは十分考えられるので注意しておこうというニューズ。

(Sep/13/05 Bloombergより引用開始)
【NY連銀が銀行14行招へい?クレジットデリバティブの事務処理懸念】
 9月13日(ブルームバーグ):ニューヨーク連銀は15日に開催するクレ ジットデリバティブ関連会議に同市場の主要メンバーである銀行14行を招へい している。この背景にはいまや8.4兆ドル(約929兆円)に膨れた同市場での 事務処理の滞りを金融当局が懸念していることがある。
 同会議開催については米連邦準備制度が8月24日に既に発表済み。ニュー ヨーク連銀の広報担当,ピーター・バクスタンスキー氏によれば,銀行の代表 者やリスクマネジャーとともに欧米の規制当局者が「市場慣行」について討議 するという。
 クレジットデリバティブ市場が拡大するにつれ,銀行や証券会社は事務処理 のスピード維持が困難となる。ゴールドマン・サックス・グループでマネジン グ・ディレクターを務めるE.ジェラルド・コリガン元ニューヨーク連銀総裁が 率いるグループは7月,リポートの中で,実際に企業がデフォルト(債務不履 行)に陥った場合,デフォルト・スワップの保有者が一斉に決済を急ぎ,混乱に つながる可能性を指摘している。
 カス・ビジネス・スクール(ロンドン)でクレジットリスクや決済システ ムの上級講師を務めるアリステア・ミルン氏は,「銀行業界は自分たちの利益 と急速に拡大する市場のパイ争いにあまりにも集中してきたため,事務処理問 題に注力してこなかった」と指摘。その上で,「システムも管理も会計も市場 の拡大ペースに追いついていない」と述べた。
 格付け会社フィッチ・レーティングスによると,クレジットデリバティブ 市場で最も活発な取引参加者は,JPモルガン・チェース,ドイツ銀行,ゴー ルドマン,モルガン・スタンレー,メリルリンチの5社。
 JPモルガンの広報担当,マイケル・ドーフスマン氏は,15日の会議には リスクマネジメントの副責任者ドナルド・マックリー氏とクレジットトレーデ ィング責任者のエリック・ローゼン氏が出席すると述べた。両氏はインタビュ ーには応じなかった。ゴールドマンとモルガン・スタンレーの広報担当者はコ メントを差し控えた。メリルとドイツ銀の広報担当者には連絡がついていない。
(引用終了)

 日本の一昔前の銀行と違って,あっちの国の銀行の事務処理なんて杜撰そのもの。ちょっとしたミスがチェックされずに大問題を引き起こすことだって起こらないとは限りません。この記事の続報にも目を光らせておく必要があるかもしれません。

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