2005年10月04日

株価回復!でも本当に「景気」って回復しているのかしらん?

 今日は「景気は回復しているのか?」という話。3つの記事を見比べてみよう。

(Sep/30/05 共同通信より引用開始)
【株含み益が半年で2兆円増 大手行、5兆4千億円に】
 みずほフィナンシャルグループ、三菱東京フィナンシャル・グループなど大手7銀行グループが保有する9月末の株式含み益の総額が、半年前の3月末に比べて2兆円近く増加、約5兆4000億円に達したことが第一生命経済研究所の試算で30日分かった。大手生命保険会社4社は同日、9月末の株式含み益の合計が3月末より約1兆9000億円増加し、7兆4000億円になったことを明らかにした。
(略)
 銀行が保有している株式の含み益は、銀行の財務の健全性を示す自己資本比率を一定程度、押し上げる効果があるため、貸し出し余力の拡大につながる。第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「各行とも中小企業向けを中心に貸し出しが増えるのではないか」と予測している。(略)
(引用終了)

 自民党爆勝,小泉再選で主に外人からの強い買いが続いている東京株式市場。原油高高騰によるオイルマネーの還流も手伝って今日の日経225の終値は13,700円の大台に乗せたようです。これはこれでめでたいことです。
 しかし,この記事だけで景気が回復していると判断していいのでしょうか?
 ※株価は景気の先行指数という考えから,このような判断がされること自体は自然です。

 ここで,重要な問い掛けをしたいと思います。この記事で言う「景気」と我々が日々感じている「景気」とは同じものでしょうか?この問い掛けを胸に抱きつつ,次の記事を読んでみよう。

(Sep/30/05 Sankei Webより引用開始)
【原油高騰 電気・ガスも値上げ 冬の家計を直撃】
 原油価格の高騰に伴い、家庭で使うエネルギーコストの上昇が目立ってきた。灯油価格は十三週連続で値上がりし、十月からは電気料金や一部地域の都市ガス料金も一斉に値上げされる。原油価格は一時に比べれば落ち着いているが、依然として歴史的な高値水準にあり、原油価格がこのまま高止まりすれば、電気・ガス料金は来年一月からさらに値上げされる可能性もある。暖房の需要期を迎え、エネルギーコストの上昇は冬場の家計を直撃しそうだ。
 石油情報センターによると、灯油の店頭価格(全国平均、二十六日現在)は、十八リットル当たり千二百四十四円。前週から二円上昇した。配達価格も一円値上がりし、千三百四十円となった。灯油価格は昭和五十七年に約千八百円まで上昇したことがあるが、石油情報センターが調査を始めた六十二年四月以降では七月第一週に最高値を更新し、その後も値上がりが続いている。
(略)
 一方、電気料金や都市ガス料金も十月から値上げされる。世界的な原油価格の上昇に伴い、火力発電の燃料や都市ガスの原料として使われている液化天然ガス(LNG)の輸入価格も上昇しているためだ。
 LNGの価格上昇は、電気やガス料金の値上げに直結する。LNGや原油など燃料・原料費の変動を自動的に料金に反映させる「燃料・原料費調整制度」により、四半期ごとに調整されているためだ。この制度によって電力十社と都市ガス大手三社は十月から標準家庭で月額五十四−二百一円値上げするが、電気事業連合会の勝俣恒久会長は「(現状の原油高が続けば)来年一月からもおそらく値上げになる」とみる。
(略)
(引用終了)

 どうですか?同じ「景気」でも指しているものが違うことがうっすらとわかってきたかと思います。これは文系の人たちがよく使うやり方で,言葉の定義を(おそらく故意に)曖昧にして,読者や一般大衆の誤解を誘おうというというものです。ごめん,文系云々という限定は言い過ぎかな。言葉の定義が曖昧だと,同じニューズを目にしても「景気は回復している」「景気は回復していない」の両方ともの解釈が可能になります。

 株価が上昇している = 景気が回復している
 原油高騰が家計直撃 = 景気は回復していない(もしくは回復しそうにない)

 どちらも正しい。ただし「景気」の遣われ方が違う。前者の「景気」とは,株価という尺度が算出(現出)されるサンプルとしてわずかな上場企業の成績を指すものであり,後者は大多数の一般ピープルや中小企業が主観的に感じる気持ちを指すものであるということの峻別が大事なのです。

 もっと言えば,前者は客観的な数字であり様々な比較作業を通じて科学的な「回復している,していない」という論証が可能である反面,ごくわずかなサンプルでの判断に過ぎないという大きな欠点を抱えています。
 後者は人それぞれの全くの主観によるところが多く,小泉信者のような楽観的立場の人もいれば,社会主義者や共産主義者もいるわけで,それらを平均したものというぐらいの捉え方しかできません。しかしこのような非科学的なものを根拠に「景気が回復云々」とは言えないので,客観化されたマクロのデータをどこかから引っ張り出して論説を補完するわけです。上の原油高騰による家計直撃のニューズがそれにあたります。つまり,こうすることで多数のサンプルを対象とした,多数の人々が感じる「景気」についてより科学的に論証できるわけですね。

 このエントリで僕が何を主張しようとしているかお分かりになってきたかと思います。
 一つは,言葉の定義を曖昧にするなということ。
 一つは,ごく少数にしか当てはまらない指標で日本全体を語ったことにするなということ。
 一つは,一つの記事だけで物事の判断をするなということ。

 ちなみに理系なら曖昧さは極力カットされます。もちろん100,000,001で割り算をするときに100,000,000で割ってしまっても良いとする論法はありますが,当然,大勢に影響を与えないからという前提があるからです。おっと,別に文系を批判するわけではないですよ。文系でも学問的には曖昧さは許されませんから。ここでは,おそらく故意に曖昧な言葉を使うことによって読者を何かの主張に導きたいという考えがあるのではないかということを言いたいだけです。それが何かははっきりわかりません。おそらく,「だから皆も株をやろう!」という主張なんだとは思いますが。

 少数サンプルの結果で大衆を惑わす。「中国株で資産が10倍になった!」「1ヶ月で資産が3倍になる投資法」・・・よく見かけませんか?こういうタイトルの本。儲けてるのはごく一部ですよ。煽られて理性を失った大衆のほとんどがバブルで大損したことを忘れてはいけません。

 ま,株をするならここまで理解した上でやりましょう。煽り記事に煽られずに理性を保ちながらやりましょう。別に僕は株式取引をするなと言っているわけではありませんから。十分な知識と理性があって引き際を冷静に見極めれる人だけがやるべきだとは思いますが。
 僕も勉強する時間があればやってみたいとも思いますが,如何せんあまり興味がないのと,日本の投資税制が不備だらけなのと,その他もろもろの理由で今はするつもりはありません。今やらないでいつやるの?という意見はよく聞きます。でも,勧められて損失を出したときに勧めた人に損失補填を要求できるのであればやってもいいです。知らないことに大金を投じたくはありません。

 さて,景気回復を疑う僕への反論を予想して一つお断りを入れておこう。株価が上がれば景気は良いのだと直接証明できるのはアメリカだけですよという話。

「株が上がれば景気が良い」というのはアメリカ国民にはある程度当てはまります。何故かわかりますか?国民の資産配分を思い出せばすぐ答えがわかります。具体的な数字は各自で拾ってもらうとして,アメリカ国民は半分ぐらい上場株式をもっています。日本人の資産配分では上場株式は数%でほとんどが預貯金。株価が上がれば含み益が増えていってさらに株を買おうかという余力が生まれる国がアメリカ。株価が上がっても家計所得に与える影響がほとんどない日本。株価で「景気」を語る手法はアメリカでは通用しても日本では通用しにくいのです。

 最後に衝撃的な事実を紹介して終わります。

(Sep/27/05 Nevada経済速報より引用開始)
【景気の悪化と個人の株売り・株価上昇】
景気はじわりじわり悪化の道を辿っていますが、マスコミでは景気は回復中との大見出しが踊っています。
個人消費も増加していると報じられていますが、以下のデータはどうでしょうか?

・8月のデパート売り上げ高(全国)  
 マイナス0.7%(総額5,168億円)

・8月のスーパー売り上げ高(全国) 
 マイナス2.9%(総額1兆1,673億円)

・8月の外食売り上げ高(全国)    
 マイナス1.5%(既存店ベース)

どこが増えているといえるのでしょうか?
しかも売り上げ高が多いスーパーは18ヶ月連続マイナスとなっており、外食も5ヶ月連続マイナスとなっており、一向に増える気配はありません。
デパートは名古屋万博の影響もあり、需要を先食いしていましたが、いまや失速し、9月は更なる大幅な落ち込みを見せるはずです。

このような中、株価だけはバブル相場の様相を見せていますが、報道されているように本当に個人が買っているのでしょうか?
昨日発表になりました9月第2週の投資家別売買代金はどうなっていたでしょうか?

個人 (現金) 3,299億円の<売り越し>
個人 (借金)   194億円の<買い越し>
投信         127億円の<売り越し>

個人は“これでもか”という程の売りを出し、今の市場から逃げているのがこの数字から読み取れ、猛然と売りを出し、市場から逃げている姿がここにあります。
しかしながら、マスコミは【個人が株を買っている】と煽っているのです。
(略)
事実と報道がここまで乖離するとその後にくる反動は恐ろしいものがあると言えます。
相場の怖さを目の当たりにして震撼する日も近いかも知れません。
(引用終了)

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この記事へのコメント
質問です。デパート売上高ほかのデータですが、マイナスというのは、前年同月対比なのか、同年前月対比なのかどちらですか?
Posted by okawa at 2005年10月05日 17:14
コメントありがとうございます。
重要なご指摘ですね。比較対象を変われば別の結論を導き得るというエントリなのに (^^;;
結論を言えば,もちろん前年同月対比です。先月と比べても説得力のある分析はできません。ボーナス月の6月と夏真っ盛りの7月の売れ筋商品とか購買単価は大きく異なるでしょうから,比べる事自体ナンセンスです。
データは僕も他のサイトで確認しました。
http://www.econ-jp.com/member-page/limit/excel/610.htm
がわかりやすかったですよ。
Posted by ボーズ丸もうけ at 2005年10月05日 20:37