2005年09月16日

新BIS規制の恐怖! 日本国債は新勘定に資産が移動する際に売られる理由

 どうあがいても決まるっちゅうねん,という声が聞こえてきそうな郵政民営化法案ですが,僕はやっぱり最後の最後まで問題点の指摘をしていきたいと思っています。ネット上あちこちで展開される,数々の法案の問題点が実は杞憂に過ぎなければいいのですが,僕にしてみれば今の時点で何も書かずに,問題が起こってから「ほれみたことか」なんていうセリフを吐きたくない。日本国を本当に愛するということはどういうことなのか。真の愛国者の主張と,本音は反対だけど小泉に睨まれたら怖いから賛成みたいな人間の主張との,背負っているものの違いを見せつけてやろう。

 いつも僕が勉強させていただいていて,このブログでも何度か紹介したことのあるサイトに「株式日記と経済展望」というページがあります(このブログの右カラムにリンクあり)。テーマによってはもちろん僕の主張と異なる部分はありますが,TORAさん(管理人さん)の,日本はどうすべきかというブレることのない視点にはいつも感心しきりです。昨日はこのサイトで秀逸な論文が紹介されていましたので,これから一部を引用させていただきます(引用の引用になりますが)。

(Sep/14/05 河宮信郎さん(中京大学経済学部教授)からML[citizens-public](市議調査研究費の情報公開を求める名古屋市民の会)への投稿より引用開始)
【「郵政改革」幻想完勝の衝撃波−不可避となった財政破綻】
(略)
2.小泉首相の「郵政改革」幻想と欺瞞的煽動
(略)
 第二に、郵貯簡保が「民営化可能」というのが幻想である。まず、自己資本の調達ができないであろう。世界最大となる金融機関にだれが十分な自己資金を供与できるか(まさか、自己資本の資金を国債発行で調達するわけにもいくまい)。
 郵貯は、低利国債を大量に抱えている。これは、BIS(国際決済銀行)の考え方では「不健全な金融機関」と認定される。実際、BIS(国際決済銀行)が06年末に導入する新国際ルールでは、「債権を大量に抱える銀行」を「当局の監視・指導下」に置くよう要請する。とくに、日本国債のような超低金利の債権には、「金利上昇→価格低落」という向きの「変動」しか起こらない(いわば経営危機の時限爆弾)。新BISルールのもとで、郵政機関は「民営化・会社設立」と同時に「当局の監視・指導下」に置かれるであろう。しかし、郵貯簡保の資金を食い荒らし、国債だらけにした犯人は歴代政府である。
政府に監視・指導を任せてよいか。
(引用中断)

 新BISの内容については以前務めていた銀行の同期が日銀・財務省との交渉を担当しているので,先日上京したときにいろいろ教えてもらっていたのですが,ここまで具体的なルールが決まりそうだということは知りませんでした。何にせよ,民営化したらBIS規制で国の管理下におかれるかもしれないらしい。これだけで民営化する意味は吹っ飛んでしまうわけですが,実はこの論文には大きな見落としがあります。わかりますか?

 実は新しく作られる郵貯銀行は新勘定しかもてません。つまり今国民が預けている郵貯や簡保は旧勘定扱いで公社承継法人という6番目に作られる会社のものになる。同様に今運用している資産である日本国債なども旧勘定扱いであり,新しい郵貯銀行のものではない。これは郵政民営化の基本方針」にしっかり書かれてあるので時間がある人は確かめてください。新しい郵貯銀行はその旧勘定の「運用」を任されるだけの投資顧問銀行のようなものなので,大量の債券を有するわけでなく,BISの新しい規制にもひっかからない。だから民営化されてすぐに当局の監視・指導下に入るわけではない。

 ではどうしてこのパラグラフを紹介したのかと言うと,書いた本人の河宮教授は気付いていないけど,ものすごい内容が隠れているからです。結論を簡単に言おう。「BIS規制を楯にして日本国債は合法的に売られる」ということです。
 わかりやすく謎解きをします。旧勘定にある日本国債の運用を任されている新郵貯銀行は,国債が満期を迎えたり期中で売却した後,その資金で新たに資産を購入しますが,これは新勘定に入ります。ここで,BIS規制があるので国債は変えませんと言えばどうだろうか。仕方ないね,アメリカの投資信託を買おうかということになる(実際は「やらせ」だから「仕方がない」なんてセリフは表面上だけ)。これが続けば郵貯の国債残高がどんどん減る。

 理由はBIS規制。民営化の基本方針が「自由な運用」であるだけに当局も強く言えないというのもポイントになるでしょう。そして郵貯の国債保有残高の減少に気付いた生保・銀行がとる行動は・・・。これまで絶妙というか微妙なバランスの上でようやく成り立っていた国債市場が大混乱に陥るのは時間の問題ですね。ま,せめてもの救いは,BIS規制により,一方的にアメリカ国債を買うことも許されないということぐらいですかね。でもそんなものボンド中心の別ファンドを作ってそこに投資してしまえば迂回できるだけなんですがね。
 郵貯銀行の運用担当者もそこまで頭が回って日本国を愛する人だったら,同じ手法で日本国債を守るんだろうけど。たぶんそういう提案を上司にした時点で飛ばされるわな。「そんな利回りの低い証券に投資するなんて何考えてるんだ?」ってな怒号を添えられて。

 あんまり長々と書くと読むのがしんどいと怒られましたので(笑),今日はここまで。

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/p-5796189/50065241
この記事へのトラックバック
連日の郵政民営化大キャンペーンによって、国民の空気が大きく動かされたにもかかわらず、民意の半分は「小泉郵政民営化法案に反対!!」でした。
民意の半分が反対 【郵政民営化】【前田慶次郎店長のブログ】at 2005年09月19日 17:31