(勉強会資料より引用開始)
民営化法案をじっくり見ると,大蔵族である小泉首相は,旧大蔵省の財政運営の失敗を郵政に責任転嫁しているように感じられる。それほど,ばら色の未来を説く政府の主張は曖昧で誤りも多い。
例えば,郵政公社がもつ国債のシェアは暴落を誘発できるほど大きすぎて簡単に売れない。国債を売らなければ資金は官→民に流れないのだが。
また財政再建が進むというのも嘘。国営のままなら利益処分は全て国が行えるが,株式会社になったらせいぜい40%の法人税しか国庫に入らない。
さらに財投債という名の国債が発行される限り,郵政民営化しても存在意義のないムダな特殊法人に金が流れる事態は変わらない。実は現行法上でやろうと思えば改革はできるのだが,財務省はそれをやらずに郵政に責任転嫁している。そして出来たのがこの法案。
驚くべきことに郵貯・簡保の新会社の株は100%売却される。330兆円の資産の運用も他人任せであることが決まっている。自分が集めたお金を自分が運用できないように法律が縛っている。
このリスクは2つ。株を握った者が本来国庫に入るべき利益を手に入れること。そして運用を任された会社が国債を自由に売却できること。
民営化して国債を自由に売らせるというのは国家破壊行為である。
ただし改革は必要である。小泉流のやり方では国に入るはずのお金が外に出ていくし,悪意ある者が国債を暴落させて恐慌を起こすことができてしまうのでダメなのだ。
法外な高金利で運用できた預託金が2008年にはゼロになる。これで郵政公社の利益はほとんど吹き飛ぶ。低利の国債運用だけでは赤字も免れまい。
さらに主力の調達手段である「定額貯金」の商品設計が今後の金利上昇リスクを勘案したものになっておらず,金利上昇によって国債下落・調達金利上昇のダブルパンチで一気に資本がなくなる可能性もある。
正しい改革は例えばこうだ。今回の法案で旧勘定と呼ばれる部分の貯金・保険で調達した資金を別組織(国債運用しかしない国策会社)に移す。その組織は当然,国が管理して運用の外部委託などはさせない。貯金の新規調達や預け替えも受付けるが「定額貯金」は廃止。
郵便や窓口業務は民間へ完全開放。
過疎地などの問題は新たに国営法人を作って税金で運営する。
とにかく330兆円の運用を他者任せにしないこと。国債の運命は国の運命である。財務省は責任を最後まで果たす義務がある。
しかし結局はいつか日銀引受けをしなければならない時が来るだろう。そしてハイパーインフレになろう。
あるいはその前に地震とかのドサクサで,その日が早く訪れるかもしれない。
(参考リンク)
よくわかる郵政民営化論
→http://www.geocities.jp/dokodemodoa_jp/new_page_4.htm
Speak Easy 社会版
→http://blog.livedoor.jp/manasan1/
マーケットの馬車馬
→http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/
ジャパン・ハンドラーズとアメリカ政治情報
→http://amesei.exblog.jp
副島隆彦の学問道場
→http://soejima.to/
西尾幹二のインターネット日録
→http://nishio.main.jp/blog/