2005年09月07日

郵政公社のバランスシートをさっくり読もう 「官から民へ」の大嘘が見えてきますよ

 昨日予告しておいた郵政問題の会計的アプローチを簡単にしておこう。ほどよくまとめられたサイト(ブログ)があり,かなり勉強させていただいたので,リンクを貼っておきます。今日のエントリはそのサイトのおいしいところを抜き出したものです。
Speak Easy 社会

【郵政公社の貸借対照表(05年3月期:最新)】

【資産の部】       【負債・資本の部】

現金・預金   9兆円   郵便貯金  211兆円(←国民)
金銭信託   12兆円   簡保準備金 119兆円(←国民)
有価証券  217兆円   借入金    38兆円
預託金   118兆円   その他負債  14兆円
貸付金    27兆円
不動産     3兆円    資本金    1兆円
その他     2兆円    その他資本  5兆円

資産合計  388兆円  負債・資本合計388兆円

※預託金は財務省への財政投融資預託金のこと。つまり財投機関債(国債)。
※有価証券内訳:国債170兆円、地方債16兆円、社債26兆円、海外証券5兆円
 つまり国債等の合計は304兆円!

 簿記をかじったことがある人には今更貸借対照表の説明は不要だと思われますが,【負債・資本の部】に記載されている方法で調達したお金を使って,【資産の部】に記載されている資産を運用しているということをこの表は示しています。一目瞭然。郵政公社は現在国民から330兆円のお金を預かって,国債・地方債を304兆円買っているということです。これから展開する話はこの数字が前提になります。

 さて,有価証券として純然と計上されている国債は170兆円。これだけでも多いっすね。330兆円集めて半分は国債で運用。ヘッジ会計が入っていないので詳しくはわかりませんが,ALM管理なんてまったくできていないんじゃないかな。スワップ残でもわかれば想像もつくのですが。簡単に言うと金利が上昇したときの含み損の額は途方もないぐらいデカイよってこと。景気が良くなって金利が上がれば一発アウトの可能性もあるということ。ただしきっちりリスクヘッジしていたらいくぶんかはマシでしょうけど(要するに公表データがないので何とも言えない)。
 金利が上がってもらったら困るので(=景気が良くなったら困るので)ずっとデフレ政策を続けているんじゃないかとまで言う論者もいますが,それは極論であるとしても,この金利リスクはハンパじゃないね。少なくとも郵政公社が先頭切って国債売却を始めるってことは考えられない。ラストリゾートだった郵貯が国債売り出したら市場は暴落するのは目に見えてますから。これはもちろん「官から民へ」の民営化が実現しても状況は変わらないです。むしろ政府の規制がなくなる分,やっかいな連中がパニックを起こそうと思えば起こしうるというリスクが新たに出てきます。だから郵貯銀行の株式には外資規制を入れろというまともな主張が出てくるんですがね。小泉首相はそれでも法案修正しないなんていう無責任なことを言い続けている。

 次に預託金118兆円。小泉首相が叫ぶ郵政問題の入り口論ですね。この財務省に運用預託されていた資金でかんぽの宿だとかリゾートだとか無駄遣いしてきたからけしからんという理屈でしたね。2002年にとっくに財政投融資は制度自体が廃止されているのにね。代わりに実質的な政府保証が付与された財投機関債となって118兆円が残っているわけですが,これもまた国債です。
 でも一般の国債と分けられて計上されているのは理由がありそうです。僕の推論ですが,この資金は多数の政府系機関の調達資金,つまりひも付き資金ですからいわゆる「くせもの」です。国債という形をとっていながらセカンダリマーケットで第三者に売りつけることなんてできないはず(できるのなら有価証券の欄に一緒に入っているだろうから)。しかもこれは小泉首相が言う通りムダな資金そのものですから,すぐに回収できるものではなく大部分が不良債権になっていると考えておかないといけない。興味深いことに,山拓も認めていた「100兆円程度の不良債権がある」というコメントが該当する可能性が非常に高いのです。

 ここまで書けば十分でしょう。売るに売れない国債だらけ。これで民営化して何が変わるの?資金が官(国債)から民(貸付など)に移るの?デフレと投資意欲減退で大手銀行の「民」への投資が減少していて,下部銀行の住宅ローン市場まで分捕っている時代に,自爆覚悟で国債を売却した資金で住宅ローン伸ばすってか?簿記3級程度の知識があれば,それがどれぐらい馬鹿げているのかわかる話なんですけど。

 雑記。今日の政府プロパガンダ紙「読売新聞」が報道していましたが,小泉首相は「郵政が民営化されれば公務員が大量に民間人になる。これほど大きな公務員削減案はないのになぜ反対するのか」などと言っているようです。はて。公務員を減らすことが目的なの?それが構造改革なの?そもそも公務員をなぜ減らさないといけないの?
 公務員が減れば,国民の税金から出ている公務員給料が減るからじゃん,何を今更わかりきったことを!みたいなコメントはぐっとこらえてちょっと考えてみてください。郵政公社は郵便局時代からずっと黒字で,しかも従業員給与は公社の稼ぎの中から出ています。国の予算から給料は出ていません。騙されてませんか?

 ま,首相が唱え続けている郵政民営化ってのは,本人が認めているようにアメリカに要望書を出される前から主張していたことです。見方を変えればすでに”時代遅れ”のシロモノってことです。10年前の情勢を前提に組み立てた郵政民営化論だったのでしょう。でも総理はそのことに気付かない。彼はそれを修正せずに力で押し切って,隙だらけの法案が前国会で出てきたので,優秀で日本を愛する本当の保守派の人たちは反対票を投じたわけですね(野党は党利党略で対案も示さないただの反対票でしたが)。その後の経緯は皆さんご承知のとおりです。

 まともに小泉首相の郵政民営化論を聞いていたらあほらしくなります。「愛」のない政治ほど空虚なものはないですね。週刊誌が報じている通り,政治家になりたいだけのくの一ばっかり引っ張り出してきて比例優遇して反対派をたたきつぶそうとしている。失うものの方が大きいと思うけどなあ。ま,「愛」がないのは民主党も同じなんですがね。個人的には「新党日本」の田中さんに期待しております。

※さらに雑記。田中さんが長野県知事に就任したときに僕の周囲で彼に期待を寄せていたのは僕一人でした。気持ち悪いだの何だのと言っていた人ばっかりでした。それが今や・・・。おっとその先は言わないでおこう。

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