2005年04月21日

『チャイナ・コントロール』

48b5eb14.jpg浜田和幸『チャイナ・コントロール』祥伝社 お勧め度★★★★
(内容紹介はじめ)
 「世界の工場」「世界のマーケット」として経済発展を続ける中国。日本企業も製造拠点をシフトし,ビジネスチャンスをうがった進出が著しい。だが,中国の真の狙いは経済発展による国民生活の向上などではなく,世界一極支配を進めるアメリカとの「最終対決」である。人民解放軍と北京政府はその準備を着々とすすめている。米中対決構図の中で,日本が中国を利用し,政治経済両面で漁夫の利を勝ち取るための戦略とは何かを探る。
(内容紹介おわり)

 つい先日,中国内部の人間以外の人が書いた本には興味がないと言った矢先に,日本人の本を読みました。おいおい,という突っ込みは軽く流します。著者の浜田和幸氏はこのブログでも何度も取り上げているように,我々が通常の生活を続けていては得られそうもない様々な情報を流してくれるわけですが,ただのメッセンジャーではなく,今後日本としてどうすべきか,何をしてはいけないか等の処方せんも提示してくれるところに,氏の一流の戦略研究家たる自信を覗くことができます。現状を悲観するだけの経済学者とか,理屈にならない屁理屈で読者を煙に巻こうとする御用学者と違って,日本のことをきっちり考えている姿勢にはいつも敬服します。

 本書は平成15年9月に発刊されたものですから,現在ではすでに1年半が過ぎています。とはいえ僕にとっては知らないことが多く読んだ価値は十分にあったなと思います。特に僕自身がまず反省しないといけないのですが,最近の中国韓国の暴走に釣られてうっかりアメリカの策(日中関係悪化オペ)に乗ってしまうところでした。アメリカの活動家が中国で反日運動を煽っているらしいのですが,そうとしらずにアメリカ様の対等同盟国として(笑うところね)意中を忖度して中国批判を毎日繰り広げる読売,産経の社説を至極ごもっともだと考えてしまった僕は猛省しなければなりません。アメリカの支配者達は内心ほくそ笑んでいるのでしょう。もっとやれと。どうしてたった1冊の教科書が検定に通ったぐらいであんなに騒ぐのか,いや騒げるのかウラがあると読まないといけませんでした。結局,日本と中国の関係が悪化するのを喜ぶのはアメリカしかいないわけで,副島隆彦氏が常々「アジア人同士争わず」と言っているのをすっかり忘れていました。

 ただし大使館が攻撃された以上は,経済戦争というかお灸を据える行動は日本から発動すべきだと僕は思っていますので,国際世論にもっともっと訴えかけて,中国に「ODA減らすなんて言わないで。日本の最新技術を提供してもらわないと盗めない,いや技術交流できないじゃないの。鉄鋼が日本から入ってこないとスタジアムとか建てられないのよ。オリンピックができなくなると困るんだよ。頼むよ。こないだの反日暴徒に参加したやつらはどうにでもなるから。ね,許してよ。」と言わせないといけない。でないと他の国でも大使館が狙われちゃう。なんちゃって。こんな野蛮なことする国は中国韓国ぐらいしかないでしょうけどね。

 本の内容に移りましょう。本書は最初から,中国発のSARS騒動を政府がメディアコントロールしてアメリカの陰謀にすり替えた話から始まります。続いて人民解放軍参謀総長のお墨付きを得て作られた『超限戦』という軍事戦略の報告書の内容が挙げられています。まずはここを引用しておきます。

(p.19より引用開始)
その中には,「アメリカのような超大国に対して,遅れた軍事力しか保有しない中国が互角の勝負を挑むには,”非対称の戦術”に頼らざるをえない」ということが述べられていた。非対称の戦術というのは,アメリカのような大国であれば決して使わないと思われるようなテロまがいの戦術や生物化学兵器を使うという発想である。
 たとえば暗殺,爆弾テロ,麻薬,毒ガス,コンピュータ・ウィルスを使ったサイバー・テロ,金融戦略,心理戦,情報戦,環境破壊といった戦術であり,いわば国際法を無視した「禁断の戦略」なのである。(略)『超限戦』における戦術の分析では,かつて地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教についても,中国にとって貴重な実践例として高い評価が下されている。
(引用終了)

 昨日紹介した記事で,どっこいアメリカもサイバー・テロの準備ができていることがわかりましたし,イラク戦争で劣化ウラン弾を普通に使ったり,バブル期の日本に対して金融戦争を起こしたりと,必ずしも大国アメリカが正攻法しか用意していないというわけではないのですが,中国としては冷静に軍事力を比較してあらゆる手段を用いるしかないという結論を出しているわけです。間にいる日本のことなんておかまいなし(笑)。日本が憲法九条にしがみついているあいだにお隣の国でものすごい作戦が立てられているんですね。

 これが1年半前だったら,怖い怖いで済んでいた(本当はすませてはいけませんが)のですが,昨日得た情報によれば大きな動きが出てくるかもしれません。しばらく本の内容からちょっと離れます。昨日4月20日の「株式日記と経済展望」(当ブログ左欄にリンクあり)にあるとおり,遠距離爆弾について中国がアメリカに並ぶ装備を完了したことを考えれば,まさに台湾有事が喫緊の問題として考えられなければならない局面に来ていることがわかります。今のままだと中国が台湾に軍事進攻すれば即効で併呑されるでしょう。国際世論がそれを阻んでいるものの,常識と理屈が通じない中国の軍隊をいつまで抑えれるのかは疑問です。異常な元安をもとにして世界第二位の外貨準備高をつかんだ中国(一位はもちろん日本)の力は決してあなどれず,場合によってはアメリカも台湾を放棄せざるをえなくなるかもしれない。ま,今のところは絵空事ですが,そうなれば日本は安全に中東の石油を輸入することだって脅かされるようになってかなりのアゲインストが吹きすさぶことになることも予想されます。だからこそアメリカはキッシンジャー人脈で中曽根元総理をせっついて憲法改正を急がせているのではないかと僕なりに勝手に読んでいるのですが,真相はわかりません。いずれにせよものすごい問題をはらんでいるのだから,良識のあるマスコミによる真相報道をお願いしたいものです(半分諦め)。

 本の紹介はほんの2割ぐらいしかできませんでした。明日のエントリで続きを書きます。

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